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アメリカン・ビューティー [DVD]

アメリカン・ビューティー

あらすじ

 40歳を過ぎた広告マンのレスター・バーナムと上昇志向たっぷりの妻キャロリン。彼らの家庭生活に潜む歪んだ真実が徐々に暴かれていく。妻は夫を憎み、娘のジェーンは父親を軽蔑している。そして会社の上司はレスターにリストラによる解雇を告げる。そんな毎日に嫌気が差したレスターは、人生の方向転換を図る。しかし、自由と幸せを求めるレスターを待ち受けていたのは、あまりにも高価な代償だった。 

 

ネタバレ感想

上昇志向強めの妻キャロリン、反抗期真っ只中の娘ジェーンを持つ冴えない広告マンのレスターはある日、会社の経費削減に伴うリストラを行う事を上司に告げられる。

 

だだっ広いダイニングに生活感がまるで感じられないあたりにキャロリンの神経質さや家庭での温かみの無さがよく現れている。

 家族での夕食中、席を離れるジェーンを追うようにレスターもアイスクリームを取りにキッチンへ向かう。同じくキッチンに居たジェーンに歩み寄ろうと会話するも心を開いてはもらえずに終わる。そんなキッチンでの二人の様子をビデオカメラで録画する怪しい若者。

 

美しい庭を作り上げ、身なりを整え仕事にも打ち込む、いかにも強い女性像を感じさせるキャロリンだが、実際には不動産業も上手くいっておらずヒステリックを起こしたりとなかなかのストレスに見舞われているよう。

レスターはというと、娘の友達アンジェラで良からぬ妄想を繰り返し、娘の私物を漁りアンジェラに着信を残したりとダメ親父一直線である。

 

盗撮を続けるお隣のリッキーを“変態”と罵るも、自分にもアンジェラのように男から見られる魅力がある事に満更でもなさそうなジェーン。

 

妻に同伴して行ったパーティーで給士をしていたリッキーが一人呑んだくれるレスターに声をかける。隣人の父親世代にハッパを勧めるリッキー。目力が強過ぎて薄気味悪い。

裏でサボっているのが上司にバレ、サボっているやつにバイト料は払わないぞ、と怒鳴られるも顔色一つ変えず、“結構いりません 辞めます バイト料は忘れて消えて下さい”と一言。ハッパで商売をしているから問題ないらしい。

 

ジェーンの所に泊まりに来たアンジェラが、レスターの体がもっと引き締まればヤッてもいいわ、なんて下ネタ全開のガールズトークをしているのをドアにへばり付いて盗み聞きしていた親父。さっそく筋トレを始める。

リッキーから買ったクスリでハイになったままリストラを左右する書類を提出し、クビになるも大金を強請る事には成功した。その金で勝手に高級車に買い替えてくる変貌ぶり。

 

キャロリンは同業者の男と不倫をし、その快楽にどっぷりとハマっていくが、ある日不倫相手と寄ったドライブスルーでレスターと鉢合わせることとなる。それでも気にする様子なく筋トレに励むレスター。

リッキーに惹かれていくジェーンは彼のとっておきのビニール袋が宙を舞う映像を見せてもらい、彼に共感し、キスをする。

ピロートークでリッキーが撮っていたジェーンとの映像が映画の冒頭に繋がる。

“あんなパパ死んだ方がマシ”“僕が殺そうか?”“殺ってくれる?”

笑い話をしていた二人だが、リッキーの目は相変わらず笑っていない。

 

息子が中年親父相手に売春をしていると勘違いした父親はリッキーに激昂する。リッキーが出て行き、大雨の中レスターの元へ訪れたリッキーの父は“見せかけの夫婦”というレスターのワードで更に勘違いしキスをする。

ゲイを忌み嫌う父親は、実は自分がゲイでそれをひた隠しにして生きて来なければならなかった葛藤や苦悩から家族にも抑圧的な態度を取って来たことがわかる。

 

リッキーに連れられてジェーンが出て行った後、レスターと二人きりになったアンジェラ。すんでのところで実はバージンだと打ち明ける。

アンジェラに幸せかと問われ“幸せだ”と答え、久しぶりに家族写真を見つめ微笑む姿は自分の答えを噛み締めているように見えた。

家族写真の中の幸せな光景を見つめるレスターが背後から頭部を撃たれて幕を閉じる。

 

 

レスターの妄想の中、常に出て来た赤い薔薇の花びら。映画のタイトルでもある「アメリカンビューティー」とは薔薇の品種の名称で、キャロリンが庭で育てていた薔薇ももちろんこのアメリカンビューティー妄想の中で散りばめられる真紅の花びらは非常に官能的で印象に残る。花びらだけでなく、キャロリンが仕事中着用していた下着も赤、レスターの自宅の扉も赤、購入した車の色も赤、といったように随所で赤色が登場する。

赤い薔薇の花言葉で代表的なのが「love(愛情)」「beauty(美)」「passion(情熱)」「romance(ロマンス)」など。

赤という色は危険や注意を促す時にも用いられるように、多用すると狂気性を孕む色とも言えますよね。

情熱的な美や愛も、多過ぎると次第に狂気に変わる。

 

レスターがリッキーの部屋で昔バーガー屋でバイトをしていた頃の話をした時、“結構楽しかった 人生はまだ真っ白で”と言っているシーンがありました。真っ白な状態からいつのまにか積み重なった赤に支配され崩れていく。

 

郊外に住む一見平凡で幸せそうに見える家庭。内情は、冷え切った関係で各々孤独と倦怠感を抱え、既に亀裂が入っている。

精神科に入院していたと噂の彼だが、その親は抑圧的で過剰なまでの折檻をする父親、内向的で神経症気味の母親、とよっぽどオカシイ。

プライドが高いビッチ自慢をするあの子も実は孤独を抱え、平凡な娘になる事を恐れる劣等感の塊。

物事にはいつも表の面と裏の面がある。

 

評価(平均点高めの設定です。)

   4.1 /5 点!

はた目には普通に見えるものも裏から見ると全く違った事実があったり、僅かな亀裂も少しのきっかけさえあれば簡単に崩壊する。そんな様子を狂気を孕んだ美しさで映している。暗いテーマなのに少し笑える余地を残しているのも良かった。

概要

監督:サム・メンデス

時間:2時間1分

提供:Paramount 

公開年:1999年 

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