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世界の中心で、愛をさけぶ

 

世界の中心で、愛をさけぶ

 

 

あらすじ

片山恭一原作の200万部突破の奇跡の純愛小説を、未来を紡ぐ新たな感動作として、行定勲監督が映画化。十数年前。高校時代。恋人の死。そして、今―初恋の女性を失った青年が抱えてきた「喪失感」。そんな彼を愛した婚約者。二人の愛は未来に踏み出すことができるのか・・・。過去の甘く淡い恋と、現在の愛との葛藤を描く美しく「せつない」純愛映画に日本中が涙した大ヒット作。 (C)2004 「世界の中心で、愛をさけぶ」製作委員会

 

婚約者である律子が、引っ越しの荷物の中から偶然見つけた1つの古いカセットテープを持って、突然失踪した。彼女の行き先が自分の故郷・四国の木庭子町であることを知った朔太郎は、彼女の後を追って故郷へと向かうが、そこで彼は高校時代のある記憶を辿り始める。それは、初恋の人・亜紀と育んだ淡い恋の想い出。しかし、その亜紀はやがて白血病で倒れ、辛い闘病生活を強いられてしまう。そして、次第に弱っていく彼女を見て、自分の無力さを嘆くしかない朔太郎は、彼女の憧れの地であるオーストラリアへの旅行を決行するのだが、折からの台風に足止めをくらいふたりの願いは叶わず、空港で倒れた亜紀は、その後、還らぬ人となるのだった……。そんなふたりの関係に、実は律子が関わっていた。入院中、朔太郎と亜紀はカセットテープによる交換日記のやり取りをしていたのだが、その受け渡しを手伝っていたのが、亜紀と同じ病院に母親が入院していたまだ小学生の律子で、彼女の失踪もそれを自身で確かめる為だったのである。果たして、亜紀の死やテープを届けていた相手が現在の恋人である朔太郎であったことを知った律子は、自らも事故に遭ったせいで渡せなかった“最後のテープ”を迎えに来た朔太郎に渡す。それから数日後、約束の地・オーストラリアへと向かった朔太郎と律子は、最後のテープに録音されていた亜紀の遺志を叶えるべく、彼女の遺灰を風に飛ばした。

 

ネタバレ感想

ジブリ作品以外ではほとんど邦画を見る事がないのですが、こちらは原作の小説、映画ともに非常に思い入れのある作品です。ドラマ版はあまり好きではなかったのですがこの映画版は何度も見ています。

 

昭和のノスタルジックな雰囲気だとか甘酸っぱい青春ストーリーを存分に楽しませておいての高い崖から一気に突き落とすような<白血病>という絶望が襲ってくる高低差。

長澤まさみナチュラルな美少女感と、森山未來の決してイケメンでもクラスのリーダーでもない、どこにでも居るような平凡な高校生男子感がとてもいい味を出しています。森山未來はこの作品が映画初出演だったようですが、何の違和感もなくさすがです。

 

校則違反のスクーターで通学していたサクを見かけ、半ば強引に後ろに乗るアキ。奔放で等身大な彼女との出会いのふわふわした心地良さがたまりません。

競い合ったり秘密を共有したり、急速に縮まる二人の仲は理想の青春時代そのもの。

 

大人になってみても思い出す綺麗な想い出とか特別な感情がある時代というと、私は高校時代が真っ先に思い浮かびます。中学までだとまだまだ子供というか、幼いんですよね、振り返る想い出としては。その絶妙な時期に、真っ直ぐな初恋を実らせ、人生の全てと言っても過言ではないくらい大きな存在となるも、その恋人を抵抗の術もなく永遠に奪われてしまう。考えただけでも胸がギューッとなるほどに中々キツイ経験ですよね。前半が楽しくて引き込まれるほどに後半の苦しみがダイレクトに伝わってきます。

 

カセットテープに吹き込まれたいつもより掠れた亜紀の声が物凄く儚げで切なくて懐かしいんですよね。

成長した朔太郎を容易く高校時代のあの瞬間に引き戻す程に。

 

体育館で亜紀がピアノを弾き終わった後、朔太郎の手を握り寄り添いながら「好きよ…好きよサク」と呟く。この一言に亜紀の無念と絶望がこれでもかと凝縮されています。ここで安易にキスするとかではなく、“ただ寄り添う”という行動が余計に亜紀の精神的なダメージを感じさせられました。

「運命なの でも私は絶対に死なないから 信じてて」

亜紀はどんな想いでこの言葉をサクに伝えたんでしょうか。大人びていて、優しい強さを持つ亜紀。自分の行く末を悟りながらも、ラジオに酷い嘘をついたことを後悔し、自分を責めるであろうサクを励ますためについた嘘のように聞こえました。もちろんそれは自分に言い聞かせるための希望の言葉でもありますが、亜紀はどこかで諦めというか、どうなったとしても運命を受け入れる覚悟をしていたのだと思います。

 

自分が死んでしまう事を悟って最期を見せまいとした彼女も、 「忘れられるのが怖い」と二人の写真を遺した彼女もどちらもが本心なのでしょう。一見矛盾しているように見えますが、複雑な葛藤があってこその言動がよりリアルです。

 

 

オーストラリアに行くため、病院を抜け出した二人。

天候不良で飛行機が欠航となった空港での有名過ぎるワンシーン。

「生きてるよ まだ私生きてるよ」

どこにぶつけていいか分からない焦燥感と心の叫び。

これがサクが聞いた最後の亜紀の肉声となった。

 

巡り巡ってようやく朔太郎の元に辿り着くこととなった最後のテープ。

「10月28日 どうしてかなぁ眠れないの 明日が来るのがこわくて眠れないの。あのね、私たちもう会わない方がいいと思うの。あなたと過ごした永遠の何分の一かの時間が私の生涯の宝物です。あなたが居てくれて幸せだった。いいよね。私たちは今日でお別れ。あなたが大人になって、結婚して、仕事をして、未来を生き続ける事を想像しながら、今夜は眠ります。」

彼女からの最後のメッセージを受け止め、これまで逃げ続けていた亜紀の死と向き合う決断をする朔太郎だった。

こうして残された者の務めを果たすため、“後片付け”に赴く。

亜紀の願いを叶え、遺灰をウルルの風の中へと撒く事で、やっと亜紀を手放してあげられた朔太郎。

 

エンドロールで流れる平井堅の「瞳をとじて」が抜群に効いてくる。

映画自体はもちろん、主題歌と合わさってとんでもなく胸に染みる作品って、自分の中ではタイタニックMy Heart Will Go Onセカチュー瞳をとじてが殿堂入りの二大巨頭です。映画館で観るとエンドロール後もしばらく立ち上がれないようなあの感覚です。

 

 

あくまでも高校時代の亜紀と朔太郎の物語であり、朔太郎の記憶の中の二人が全てで、きっとその記憶はこの世で一番綺麗なものとして完結しています。大人になった朔太郎自身ですら入ることのできない・踏み込みたくない領域なのではないかな、と感じます。なので律子の部分にはあえて触れませんでした。

評価(平均点高めの設定です。)

   4.8 /5 点!

王道の悲恋物。ノスタルジックな雰囲気と合わさって余計に泣けます。

 

概要

監督:行定勲

時間:2時間18分

提供:東宝

公開年:2004年

 

世界の中心で、愛をさけぶ (小学館文庫) [ 片山恭一 ]

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