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Midsommar [DVD]

ミッドサマー

あらすじ

不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。

長編デビュー作「ヘレディタリー 継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の第2作。

 予告動画


『ミッドサマー』本国ティザー予告(日本語字幕付き)|2020年2月公開

ダニー役を「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピューが演じるほか、「トランスフォーマー ロストエイジ」のジャック・レイナー、「パターソン」のウィリアム・ジャクソン・ハーパー、「レヴェナント 蘇えりし者」のウィル・ポールターらが顔をそろえる。

ネタバレ感想

劇場公開を楽しみにしていたこの作品、ようやく観に行く事ができました。

うーん…一言で言って頭おかしい

控え目に言っても頭おかしいです、はい。

 

主人公は双極性障害を患う妹を持つ女子大生〈ダニー〉。妹から一家心中を示唆するようなメールが届き狼狽て家族に連絡を取ろうとする場面から始まるのですが、彼女自身も抗不安剤を常用しメンタルに問題があるようです。

恋人の〈クリスチャン〉に依存しまくりの典型的なめんどくさい系女子なのですが、妹の〈トニー〉は今回こそ死ぬ死ぬ詐欺でなく完璧に実行に移してしまうんですね。車の排気ガスを使いホースでガチガチに固め吸入し目をかっぴらきながら息絶えているあの現場は家族じゃなくてもトラウマものでしょう。

一年以上別れたいと言いながらダニーをほっとく事ができずなんやかんや言い訳しながらダラダラと交際を続けているクリスチャンに周りの友人達も「さっさと別れちまえよ」と男同士で背中を押しておりますが、そんな折にこの事件が舞い込んできて、大荒れになってしまったダニーをますますほっとけるはずなくお互いに息苦しさの残る付き合いを続ける二人。

民族学を専攻するクリスチャン達は、友人グループの内の一人である〈ペレ〉の故郷でもあるスウェーデンの小さな村ホルガで行われる夏至祭を見に行こうと旅行の計画を立てており、どうせ来ないだろうとタカを括って誘ったダニーが空気を読まずについてきてしまいます。

SF物でもないのに上下が反転する演出って珍しいよな〜なんて呑気に見ていると、着いてそうそうハッパでトランス状態になったり『THE儀式』的な夏至祭の開会式があったりと不穏アンド不穏です。ぞろぞろと森の中を歩く一行を真上から撮っている映像も緩い動きなのに酔いそうになる不思議な映像に感じました。

不協和音がずっと続いているような状況下で、人々の優しげな笑い声や風景だとか色彩鮮やかな花だとかが美しければ美しいほどどこか怖く感じます。

言葉もロクに分からない僻地のカルト村というだけで恐ろしいのですが、一応友達の故郷な訳でわりと呑気に非日常感を楽しむ面々ですが、笑えてくるような異文化の儀式の途中で男女の老人二人が椅子に乗ったまま運ばれていくあたりで内心(あっ…)と直後に起こるであろう鬱展開が読めてきます。

その前にペレが話していた、この村の人々は18年を1単位にした四季に例えて人生を歩んでおり、四季が一周した72歳以上はどうなるんだという問いに首を切る仕草をしていましたが、これが案の定ジョークではないのです。

手のひらをザックリ切られているだけでも痛々しいのに断崖絶壁から飛び降りるご老人。

あまりの出来事によそ者は震え上がりますがここで終わってくれないところがミッドサマーです。続くように飛び降りた爺さんは真っ直ぐ落ちてしまったが故に足がグッチャンコになりながらも即死できず、こんな時のために用意していました!と言わんばかりの木槌で代わる代わる頭をグッチャンコにされ絶命。これが音だけとかじゃなく、結構マルッと全部見せてくれるのでそれなりにスプラッタ系が得意じゃないと絶対にお勧めできません。立て続けに襲いくるグロさがありました。

そういえば始祖ユミルがどうのこうのと話しておりましたが、進撃の巨人はこんなところからとってきてたのか〜…と脳内脱線も。

 

このとんでもない村でどんどんと数少ないよそ者の姿が消えていくのですが、ロンドンから来ていたカップルはともかくとして、ペレの仲介で来ていたダニーの御一行はなんだかんだと皆クズじゃなかったですか?(笑)

ダニーはまあ精神的に問題がある程度ですが、元々ダニーとは別れろ別れろと言っていたいけすかない性格を全面に押し出した〈マーク〉は、村の人々がなによりも大切にしている先祖の木に立ち小便をかけ、知らなかったとはいえ事情を聞いてからも「ただの枯れた木だろ!」と反省の色は見えない随一の屑っぷり。

論文を書くためかなりの歳月をかけて研究をしていた冷静沈着な努力家〈ジョシュ〉も、一見まともで頼れるかと思いきや、神聖なものとされて写真を撮るなんて有り得ないと断られた書物を、自分の研究のための写真欲しさに夜間忍び込み、民族学を学んでいるはずが彼らの慣わしなど尊重する気のなさを見せつけてくれたり。

クリスチャンは優柔不断でどこか女々しいだけの根はいい奴かと思っていましたが、とんでもない儀式を見てから「ホルガを論文に書く」と言い張り、何ヶ月も研究を重ねてきたジョシュに対する遠慮ゼロのデリカシーの無さと無駄な頑固さがあります。

だから誰が死んでもまぁ…と思えてしまうところや、いまいちペレが友人を嵌めた感が薄く映ること、陰毛とか尿が出てくる恋のまじないだったりの描写があっさり過ぎていったり、かなり狂気を感じる存在感を放つ女性の長的な人物の恐ろしさをもう少し見たかったなとか…充分すぎるほどサイコスリラーではあるものの2時間半もの尺があるならその辺ももうちょっと…という気持ちもありました。

最後まで残ったものが村の女王『メイクイーン』となる踊り続ける儀式も、そもそもがよそ者を引っ張ってくる為にダニーが残るよう仕立て上げられていたのかどうかとか、ペレは友人達を騙す気まんまんだったのか、それとも村のために犠牲になろうが、それを良しとする思考回路が故に純粋な気持ちで連れて来ていたのかとかも教えて欲しかったです。

あと最初に出てきたダニーの家族の死については、『家族』という代えられないものを失ったからこそ新しい『家族』を心の支えに傾倒していく、みたいな事なのでしょうが、終わってみればそこまで密な繋がりでもなかったかなぁ。まあでも依存症気味のダニーが依存相手であるクリスチャンから共同体へと依存の対象を乗り変えた背景に家族を失い抱えた孤独が深く関わっていると言われればその通りかもしれません。

サイモンの殺され方はヴァイキングに出てきた血の鷲なる処刑法と同じでしょうか?村に着く前にヴァイキングについて少し触れられておりましたし。

90年に一度の祝祭、9日間続くフェスティバル、9人の犠牲…とかやたらと9の文字を見た気がするので、北欧系の神話や信仰の中では9の数字にきっと何か意味があるのでしょうね。

子孫繁栄のために時折外部から人間を連れてくるだとか、純粋な物の見方をするとされる障害者を近親相姦によって意図的に創り出すとか、実際に古にあってもおかしくなさそうな慣習でしょうしこれも実際の民族学に基づいているのかもしれません。

ラストの炎に包まれた神聖な場所だと言われていた小屋はこの儀式のためにせっせと用意されていた訳ですか…炎に包まれて死んだと話していたペレの両親もこの儀式に志願したのかなるほど…と理解しました。女王としてクリスチャンを犠牲者に選んだダニーは、自分を裏切った恋人への復讐心から彼を指名したのでしょうが、もはや共同体に染まりかけているダニーからすれば神聖な儀式への参加は誇れる事でもあるでしょうし、その矛盾を考えると頭の中ぐっちゃぐちゃになりそうです。

とにかく頭おかしいし意味わからんし、急にデカいモザイクは入るしで、結果楽しめました(笑)

周りが徐々に洗脳されていくパターンとかも見てみたい気がします。

評価(平均点高めの設定です。)

  4.2 /5 点!

スウェーデンへの風評被害に繋がるだろ、と言いたくなるほどに衝撃的で狂気的なお話。グロ注意です、本当に。

概要

監督:アリ・アスター

時間:2時間27分

配給:ファントム・フィルム

公開日:2020年2月21日

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