エピソード2『自動工場』”Autofac”
あらすじ
我々が知る世の中がもはや崩壊しているにもかかわらず、ある巨大な自動生産体制の工場は、消費者主義の原理にのっとり稼働し続けていた。その原理とは…「人は幸せになるために消費し、消費を続けるには、選択の自由や自由意志は不要である」。一部の反逆者たちは、その工場を閉鎖に追い込もうと決意するが、奇しくも自分たちこそが最適な消費者であるかもしれないと気づくのだった。
ネタバレ感想
原作:『自動工場』 “Autofac”(1955)

- 作者:フィリップ・K. ディック
- 発売日: 2004/01/01
- メディア: 文庫
大陸間戦争により大地が荒廃した世界で、戦後20年が経過し消費者を失いながらも稼働し続ける巨大な製品工場が。
その工場で作られた製品がドローンによって自動運搬される工程を逆手にとった人類の生き残り達は、革命家としてドローンを撃墜し埋め込まれたシステム基盤を取り出します。
資源を消費し続け環境を汚染し水までも毒された状況に加えて、工場側の自衛のための偵察機や殺人マシンまで蔓延っているなんてある意味ウォーキングデッドより悲惨な世界です。
適応能力のあるAIに支配された世の中をまた人類が主導権を握るために「工場が不要だと自覚させ閉鎖させる」という目的を掲げる革命家達。ドローンから取り出した基盤をハッキングし、かつて使われていた顧客サポートに一か八かで苦情の申し入れを行ったところ派遣されてきたのは、〈アリス〉と名乗る意識疎通のための『G10アンドロイド』。
工場側は既に戦争が終結していることも知った上で稼働を止める気はないという事実が発覚し、プログラミングに精通した〈エミリー〉が中心となってアリスをショートさせるという強引な手段に出ました。
単独でアリスとやり取りをしたエミリーは、あまりにも複雑過ぎるアリスのプログラミングを再構築するには時間がなさ過ぎるため、撃墜したドローンのプログラミングに書き換えてしまうことでアリスそのものを無くそうとします。
これに対し、アンドロイドであるはずのアリスは自身が存在しなくなることを恐れたかのようにエミリーの要求を飲むことに。
自動工場に革命家を連れて入るという要求通りにアリスは動き、仲間二人をつれて核弾頭を工場内部に仕掛ける任務を遂行しようと潜入したエミリー。
アリスの協力の甲斐ありすんなり内部に入れたものの、そう上手くはいかず散らばった仲間は人知れず殺されてしまいます。
そしてアリスにも裏切られたエミリーでしたが、ここで新たな事実が明らかに。
エミリーや仲間達も人間ではなく、人類は既に核戦争で絶滅しており、消費者を失った工場は根本から問題を解決するために消費者そのものを製造するため人間の代替機を作り上げていったのだとか。
世界の至る所に別のエミリーや仲間が存在し、彼らは工事の思惑通り製品を消費しているそうで、反乱の意思を持った革命軍こそプログラムの欠陥によるエラーだと話すアリス。
ただ、面白いのがここから更にドンデンがあるところでしょうか。
エミリーは自身が造られたアンドロイドだと数年前から気付いており、自らにマルウェアを埋め込むことでウィルスを感染させていたというのです。剃刀で頭を開くあのシーンはそういうことかぁ〜。
何度も繰り返し遠い過去の夢を見るアンドロイドのエミリーは、自動工場の創造者〈エミリー・ザブリスキー〉をベースとして造られた代替機で、自分で作り上げた工場のカタを自身でつけるという因果。
周りの仲間達もロボットだと分かりながら彼らとコミュニケーションを取り関係を築き上げ、アンドロイドのはずの恋人に「愛してる」という人間特有の感情が芽生えたのを垣間見たエミリーは、意図せずとも人間性を埋め込まれる形となった自分達はもう『第二の人間』と言っていいと考えたのです。
核弾頭での破壊計画はフェイクで、工場の内部に踏み入れるだけで感染させられるウィルスを持ち込んだエミリー。彼女は今後、第二の人間としてどのように生きていくのでしょうか。
1話では、何をもってして『自分』なのかというテーマがありましたが、今回のエピソードではもっと大きい括りで、何をもってして『人間』と言えるのか…ラストに映った恋人との再会を心から喜ぶアンドロイドエミリーの姿を見て深く考えさせられました。
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