エピソード4『ベトナム』“Vietnam”
あらすじ
幼い頃から弟ニックのことを守ってきたジャック。戦場から送られてきたニックの手紙を読んでその窮状を知ったジャックは、弟のそばへ行こうと自ら兵役を志願する。
ネタバレ感想
整備士でほぼ戦闘には参加していないと言っていたジャックですが、スピード出世で二等軍曹を担っていたジャックはバリバリに隊を率いて壮絶な撃ち合いも経験しておりました。ある晩敵軍の奇襲に遭い、1名の仲間を失い、1名は片脚を吹き飛ばされる目に遭うという悲惨な状況を目の前で目撃する事となります。銃撃が飛び交う中身の危険も顧みず、負傷した仲間に駆け寄りすぐさま衛生兵を呼んで励まし続けたジャック。
脚を失くしそのまま救護ヘリで故郷に帰る事になった仲間との会話でいかにジャックが良き戦友として慕われていたかが分かります。そして、ジャックの恐怖心を見抜いた友は自身の身体の一部を失いながらジャックに対して、母親直伝の恐怖に身が竦んだ時の対処法を教え、最後まで彼の心配をしながら、戦場に残して行く友人を少しでも安心させようとしているように見えました。
人は恐怖に対面した時、自分を生かす術すら忘れる…『息をしろ』という教訓があまりにも深いだけでなく、それが受け継がれ、思春期でたびたび発作を起こしていたランダルにジャックが同じようにしてやっていた仕草がここに繋がるのか、と感動すら覚えます。
義足の男性が『ピアソンの息子』から届いたメールを読むシーンがあったので、この時の負傷兵〈ドニー〉こそが、ケヴィンが聞くことの出来なかったベトナム時代の父親の話を知りたい気持ちからコンタクトを取ろうとした相手でしょう。
そもそもジャックが戦地へ赴いたのは、〈ニック・ピアソン上等兵〉つまりは戦場に居る弟から届いた「懲罰で降格になった」との手紙を読み、現場の過酷さを綴るその言葉を見て幼い頃から守り続けていた弟のそばに居てやりたいという想いが募り自ら入隊を志願したという経緯があったようです。
頻脈があるため徴兵免除されていたにも関わらず、「弟と同じ場所に居たいんです、何もしてやらなくてもそばに行ってやりたい」とかかりつけ医を説き伏せて危険な戦場へ繰り出したジャックはその後比較的楽な駐留任務から24時間の休暇を貰い補給用のヘリでニックの元へと駆け付けます。戦時中にも関わらずこの行動力はもはや異常なまでの家族愛と言っても過言ではありません。
妻や子供達からはヒーロー扱いされていたジャックですが、それよりも遥か昔から弟に「スーパーヒーローだ」と崇められていたのですね。
当時、選抜徴兵制が抽選になっておりその結果がテレビで中継され誕生日を呼ばれると徴兵対象、というシステムだったなんて初めて知りました。他の映画やドラマでもあまりお目にかからないシーンではないでしょうか。
弟と二人、バーで中継を見ていたジャックは10月18日が読み上げられた瞬間に「知り合いの居るカナダへ逃がすから大丈夫だ」と本気で逃亡を企てます。
しかし家へ帰り、この頃から既に威圧的で酒浸り、それに加えて母に暴力までふるうDV親父から初めて認められ「頑張ってこい」と声を掛けられた事でニックの心は決まっていたのかもしれません。
国境越えのためジャックと宿で休んでいたはずのニックは、「ずっとありがとう、今度は俺が救う番だ」との書き置きを残して一人戻っていきます。
まだジャックが幼く、ニックが産まれた頃の彼らの父親はこれまでの描写からは想像がつかないような良い夫であり良い父親でした。
ジャックが弟を守り続け、戦地にまで追い掛けたのは「兄は弟の面倒を見るもんだ、唯一の役目でそれだけが大切だぞ」という自分が尊敬できた頃の父親の教えがずっと根底にあったからかもしれないですね。
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