エピソード13『小さなバレリーナ』“Our Little Island Girl”
あらすじ
ベスは腰を痛めた母親を心配して実家へ向かう。相変わらず手厳しい母親と顔を付き合わせるうちに、夢を諦めさせられた少女時代がよみがえってくる。
ネタバレ感想
冒頭、ベスの母〈キャロル〉が校長を務める職場の学校を歩くシーンで個人的に好きな曲の【I Say A Little Prayer】が流れていて上がりました。『Glee』でチア部の3人が歌って踊って見せた曲で覚えている人も多いのではないでしょうか。
幼少期のベス役もどことなく面影があって良い配役です。教師をするしっかり者で厳しい母親と寛容な父親の家庭で育ったベスは、夢だったバレエ・アカデミーのオーディションを勝手に受け、合格の連絡が来ると父親の後押しもありバレエを習い始めます。
ベスがバレリーナを目指していたというのはなんとなくイメージと違って驚きました。
ティーンになり思うように芽が出ず、それでも周りの10倍努力してプロを目指そうと決意した矢先に父親の肺ガンが発覚。
こんな時にも淡々と事実だけを話し、涙を流す事すら許されずすぐにテーブルの片付けを手伝うよう言うブレないキャロルですが、自分のレッスン費のために働き過ぎて病気になったんだと感じ「バレエをやめる」と言ったベスに「何を言ってるの、選んだ道を究めなさい」と一喝するのもまた母親としての愛情だとは思います。
ある日、才能の違いを見せつけられるような黒人の新入生が入ってきて心が折れかけているベスの暗い表情を感じ取り、慰め励ましてくれた最愛の父は舞台の配役発表を目前になくなってしまいました。
ベスのダンスを誰よりも応援してくれていた父親の気持ちに応えるように休まずレッスンに出たベスでしたが、ソロは新入生に決まり無念の思いで「ソロじゃなかった、必死に頑張ったけど失望させてごめん」と母親に報告します。「ベストを尽くしたならそれでいいの」とこちらが泣いてしまいそうになるような言葉が返って来たのですが、その余韻も束の間に自主練中のベスの部屋に大学の資料を持って入って来たキャロル。
バレエ団に入る目標があるから大学は視野に入れていなかったベスですが「そのつもりだったけど進路を変えなきゃ とても残念に思うけどあなたの道はダンスじゃない、ニューヨークに行っても生活に苦労するだけでどのバレエ団にも受からないわ もうレッスン費は出さない、成功しないから」とあまりにも直球で娘の心を砕き割ったのです。
腰を怪我した老齢の母親の元を訪ね、相変わらず怖い存在のキャロルに仕事を辞めるようゾーイと一緒に説得します。
しかし、キャリアを積み上げてきた母親がゾーイの言葉に反発して、自分やベスの仕事を引き合いに出して手厳しい口撃に出たものですから「クビになって数ヶ月よ」とこれまで母親に言えずに隠していた事実がベスの口からポロリと出て地獄のような空気になってしまいました。
いつも弱みや悲しみを見せず、痛みがあろうが絶えず前に向かって進んでいくキャロルらしく、隠していたことに怒りながらも有無を言わさず自分が就職活動を手伝うと言い出したり支配的な面も変わっていません。
ゾーイいわく「母親の前では貝になる」くらい萎縮しがちなベスですが、この夜は違いました。父親の死に対し、「悲しみに暮れた日々を送るべきではなかったけれど、きちんと悲しむべきだった」「私から踊りを奪うなんて」と心にあるわだかまりを吐露するベス。
それすら動じず「成功する見込みはなかった、あれが限界だったの」と返す母親に「他の兄弟が家に寄り付かないのはママのその態度よ、ママの周りには空気がない、息が苦しくなるの 悲しむゆとりすらない」と痛烈批判。
ベスは心の中にまた踊りたいという願望を持ち続けたまま今日に至っていたようです。そしてベスが選んだ夫は父親にそっくりで、夢見がちだけどそれを『恥』だと教える親の元で育っていないから自由なまま。空想を抑圧されてきたベスにとって最も近い存在のランダルでさえまっすぐに見られず正直に自分の夢を打ち明ける事もできない、と。
今までも馴れ初めはほんのり出てきていましたが、ティーン時代のキャストが交わるシーンを見ると、改めてベスとランダルの出会いが二人ともこんなに若いうちだったとは…と感慨深いものがありました。
ダンスをやめて、進学の道を選んだからこそのランダルとの出会いでもあるのですね。
翌朝、キャロルはベスに対して自分の母親の話や、心配し過ぎて時には息苦しくなる事もあった自分の話、一緒に居ると少しだけ気楽になれてやっと息ができた夫の話を始めます。
「パパが亡くなって私の周りの空気も消えてしまったの、残ったのは心配だけ、末っ子に元気でいて欲しい」と目に涙を浮かべて語ったキャロル。
「ママは良い母親よ、お陰で強くなれたしママの選んだ道のおかげで夫や娘たち、12年間続けた仕事に出会えた」と感謝の気持ちを伝えたベスに「それでもバレエは続けさせたらよかった、ごめんなさい」と初めてかもしれない謝罪の言葉が出た事で、二人の間にあったわだかまりはすっかり解け切ったようです。
清々しい気持ちで自宅に帰り着いたベスは、夫に次の道を決めたと報告し全面的な応援の元バレエ教室へ足を運びます。
習い直すのではなく「教えたいの」となるのがさすがベスという感じ。教師である母親の血がしっかり流れているのを感じさせます。
非常に前向きになれるような先が楽しみになるエンディングでした。
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