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映画感想≫≫Attila Marcel ぼくを探しに

ぼくを探しに

ぼくを探しに

あらすじ

幼い頃に両親を亡くし、そのショックで言葉を話すことができなくなったポールは、伯母のもとで世界一のピアニストになるよう育てられる。友だちもいない孤独な人生を歩み、大人になったポールは、ある日、同じアパルトマンに住む謎めいた女性マダム・プルーストと出会う。彼女のいれたハーブティーを飲むと、固く閉ざされた心の奥底の記憶が呼び覚まされていき、ポールの人生に変化が訪れる。

アカデミー長編アニメーション賞を受賞した「ベルヴィル・ランデブー」や、ジャック・タチの遺稿をもとに映画化した「イリュージョニスト」などで知られるフランスのアニメーション作家シルバン・ショメが、初めて手がけた実写長編作。「ベルヴィル・ランデブー」のサントラで使われた楽曲「アッティラ・マルセル」に着想を得て、仏文豪マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」のエッセンスも織り交ぜながら、孤独な主人公が不思議な女性との出会いから失われた過去の記憶が呼び覚まされ、少しずつ変化していく人生を描いたファンタジックな物語。

ネタバレ感想

主人公は2歳の頃に両親を亡くしたショックから声が出なくなってしまったピアニストの青年〈ポール〉です。

風変わりな二人の伯母に育てられ音楽家に囲まれ母親の面影を追いながら静かに孤独に暮らしております。

失声症の主人公なので一言も喋る事も独白シーンすらもなく表情や仕草、周りの人々の会話だけで展開していくのが面白い。

ある日盲目の調律師の落し物を届けようと迷い込んでしまったアパートの一室で〈マダム・プルーストと出会いその人生が大きく変わります。

公園の大きな木然り、自宅を畑のようにして植物を育て半ばジャングルのような室内と化しているマダム・プルーストのアパート然り、眩しいほどの緑が色鮮やかで終始流れる小粋な音楽と相まっていかにもお洒落なフランス映画といった感じです。

ただ、話は意外にも分かりやすく、お洒落さに特化した意識高い系の取っつきにくい映画という事は全くありません。

魔女のようなマダム・プルーストの淹れるハーブティーには一種の催眠要素があり、それと音楽を併せる事で記憶の奥底に沈んだ過去を垣間見る事が出来るという不思議な空間が広がります。

口が悪く横柄な態度にも見えるマダム・プルーストに有り金をむしり取られるのかとか、中毒性のあまり催眠にのめり込んでしまい廃人と化すのではとか要らぬ心配も一瞬頭をよぎりますが、段々とこの怪しげで寂しいマダムに惹かれていくのです。

ポールはショック云々以前に幼児期健忘でそもそも思い出す事が困難なレベルの過去を垣間見、家族に囲まれる赤ん坊の自分視点を何度か体験するのですが、過去のシーンはミュージカル調になっていたりするのも現在とのギャップが大きく印象的です。

父親が母親にDVを加えているシーンを見てしまい不安定になったり、実際には仲睦まじい夫婦のプロレス技の練習だった事を追体験で知った時のポールの思わず出た泣き笑いのような演技がこれでもかというほど共感させられました。

両親の不仲など無く、幸せな二人だった事をその目で見て大きな糧となり長年優勝出来なかったコンクールでついにトロフィーを貰うのですが、ポールの心の成長の陰でマダムは患っていたガンにより亡くなってしまっていたのです。

唯一出来た友と呼べる女性を知らぬ間に失い、両親の死の真相を違法な間抜き工事のせいで床板を突き破って落ちてきた巨大な塊の下敷きとなった瞬間だったと追体験で知り、その巨大な塊が今自分が使っている伯母宅のピアノだったと繋がった時のポールの哀しみは計り知れないものがあります。

記憶の中には思い出したくないような、思い出さない方が良かったと言えるような過去もあり、全てを取り戻す事が最善とは限らないと思えるのですが最終的にポールがこれらを受け入れ新たな自分の道を進んで行くハッピーエンドで締めくくられました。

 

マダムの存在感がとにかく凄かったです。余談ですがこの方、『最強のふたり』にも出演されてましたね。

出てきた瞬間は明らかにヤバイおばさんにしか見えないですし、まあそれなりにヤバイおばさんではあるのですが、そのマダムも哀しい現実を背負っていて死の恐怖に抗いもがきながらもポールだったりその他の常連客だったり公園の大きな木だったり色んな物に手を差し伸べる深い愛情を持っているのです。

マダムの墓標の前にはきっと多くの人が供えたであろう数々の品が並べられており、人知れず彼女が愛されていたのだなと伝わってきます。お墓なのになんだかポップで静かな楽しさに満ちている雰囲気すらありました。

 

ラストで初めてポールが声を出すのですが、これがなんというか演出のためのわざとらしさを感じない一言といいますか、とにかく見て良かったなと感じました。

評価(平均点高めの設定です。)

 4.3 /5 点!

音楽と映像がお洒落であたたかい作品でした。

概要

監督:シルバン・ショメ

時間:1時間46分

配給:トランスフォーマー

公開年:2013年

ぼくを探しに(字幕版)

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ぼくを探しに [DVD]

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