雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
あらすじ
ウォール街のエリート銀行員として出世コースに乗り、富も地位も手にしたデイヴィスは、高層タワーの上層階で空虚な数字と向き合う日々を送っていた。そんなある日、突然の事故で美しい妻が他界。しかし、一滴の涙も流すことができず、悲しみにすら無感覚に自分に気付いたデイヴィスは、本当に妻のことを愛していたのかもわからなくなってしまう。義父のある言葉をきっかけに、身の回りのあらゆるものを破壊し、自分の心の在り処を探し始めたデイヴィスは、その過程で妻が残していたメモを見つけるが……。
「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャン=マルク・バレ監督が、「ナイトクローラー」「サウスポー」の演技派ジェイク・ギレンホールを主演に迎え、妻の死にすら無感覚になってしまった男が、身の回りのものを破壊することで、ゼロからの再生へと向かっていく姿を描いたドラマ。
ネタバレ感想
鑑賞後とりあえず言いたいのは、なんだこの邦題は…というところでしょうか?
ある日突然目の前で妻〈ジュリア〉を失ってしまったインテリエリートの男〈デイヴィス〉が壊れていく話。
壊れていくと言っても、それまで全てに無関心だった主人公の感情が、『分解』や『破壊』を通して解放されていく様はある意味あるべき姿に返っていると言った方がいいかもしれません。
そもそも妻との結婚生活があったからこそ、義理の父親のコネで社会的地位を確立してエリートとして悠々自適な日々を送っていたデイヴィスは知らず知らずのうちに自身を抑圧していたのか、しかしだからと言ってそれが妻を愛していない事に繋がる訳では決してないという、単純な表裏一体では簡単に答えが出ないような人生と言いますか…。
妻が亡くなり情緒不安定のまま、ICUの脇に設置されたスナックの自販機でチョコを買おうとするも出て来ず、その件に関して自販機会社にクレームの手紙を入れるデイヴィス。
その手紙が4通にのぼったころ、顧客課の担当〈カレン〉が個人的に連絡を入れてきて、彼女に執着し始めるところでその手のストーカー的狂気のお話かと思いきや全くそんな事はなく…。
彼女の非行息子〈クリス〉と、大人としてあるまじき態度で接していき信頼関係を芽生えさせるデイヴィスは、どんどん異端さが限界突破していくものの、本人は非常に生き生きとして見えるのです。
ところどころでアニメ描写が入ったり無音の回想シーンが入ったり大袈裟な暗転があったり、癖のある演出が目立ちますが、この主人公の心情に上手くマッチしているからか、そのモヤモヤ感すら不思議と心地良い。
なんだか小洒落ていて、しかしカオス。どう表現していいか分からないような人間の感情の葛藤というものをよくこれほど上手く表現したな…と感心すら覚えました。
評価(平均点高めの設定です。)
4.1 /5 点!
極端な静と動が共存しているようなアンバランスさが個人的には好きでした。
概要
監督:ジャン=マルク・バレ
時間:1時間41分
配給:ファントム・フィルム
公開年:2017年