エピソード13 “The Tanganyika Green”
あらすじ
ケンブルフォードで開催されたカウンティ・フェアにタンガニーカから一組の親子がやって来た。しかしその夜、父親が何者かに殺されてしまう。殺害現場の宿の庭には、植民地の公務員に支給されるピストルが落ちていた…。
ネタバレ感想
町で初めての催しとなるアンティーク市が目玉となる夏のお祭り“カウンティ・フェア”が開かれ、ロンドンからは鑑定人が来ています。
〈オルダス・ケンプ〉もこの催しのためにケンブルフォードにやって来た客人の1人で、タンガニーカ人だった亡き妻との間に出来た娘の〈グレース〉と2人でしばらく滞在するそうです。
ケンブルフォードの人々は、カウンティ・フェアに備えて、こぞって自慢のアンティーク品をクリーニングしようとしていて、彫金店はまたとない稼ぎ時です。
店の主人〈フランク・ハモンド〉と、美術学校を出ている息子の〈ジョン〉は折り合いが悪いとまではいかないものの、店の資金繰りの悪さからくる苛立ちで息子にキツく当たる場面も。
ロンドンから来た競売会社の〈コリンズ〉がパブで宿の文句を言っている場面を見つけて屋敷に泊まらないかとお誘いをかけるバンティ。
道中でブラウン神父と出会い、宿でオルダス・ケンプが亡くなった事を聞いたコリンズは娘について言及しており、宿で挨拶したと聞きます。
バンティもコリンズの荷造りを待っている間、パブで先に父親が帰りグレースが泣いているのを見たとブラウン神父に伝えました。
父親が亡くなっないるのを発見したのは娘のグレースで、彼女は酷く動揺していますが、その直前に父親から何を言われていたのかも気になるところ。
鑑定目的で来ていたはずのオルダスの部屋にはそれらしきものが見当たらず、アンティーク品を盗まれた可能性が浮上します。
宿の裏手、開いている窓の下に位置する草むらの中から発砲した形跡のない古い銃を見つけて、これは凶器ではなく鑑定に出す予定だったのではないかとマロリー警部補に伝えるブラウン神父ですが、警部補によればこれは植民地駐在の役員に支給される大した価値のない銃だそうで、東アフリカ郵政公社に勤めていたオルダスが持っていて不自然はない、と。だからと言って草むらに落ちているのは怪しいですし、グレースによれば暴力を嫌う父親は国を出る時に銃も捨てて来たそうなのです。
パブで泣いていた理由は、進学予定だった医学部に進ませるお金がないと告げられたからでした。しかしその直後に戻って来た父親から「安全な場所に」と言って封筒を渡され、詳しい話は明日説明すると言われてひと先ずの仲直りはした後にこんな事になってしまったとか。
部屋からクロロキンというマラリアの薬を見つけたマロリー警部補は、グレースを殺人容疑で逮捕します。
監察医によればオルダスの死因は睡眠薬と抗マラリア剤の併用によるもので、枕元にあった飲み物からは睡眠薬が検出されていて、その飲み物というのが、グレースが部屋の前に運んだものでした。
医学部志望で薬剤併用の禁忌について知識がある上に、飲み物を運ぶ前に父親と揉めていたと証言が上がり、駐在員に出る多額の死亡給付金目的と見なされて立派な容疑者候補になってしまったグレースです。
連行されていくグレースからの隠されたメッセージを受け取ったブラウン神父は、未開封のままだった封筒を見つけて中身を確認。
中には総督主催パーティーへの招待状が入っていました。
見つかった銃がオルダスのものでないのであれば第三者が関与しているはずだというブラウン神父の考えを聞いたバンティは、銃の修理職人に話を聞いてみる事を思い付きます。
聞き込みの結果、ハモンドがウサギ撃ち用の弾薬を買いに来ると情報を得て、彫金店を訪ねたバンティはお得意の口八丁で彼の銃を見せてもらえる事に。店には売り物のキリンの絵が飾ってあり、唐突にその絵を買い取るブラウン神父。
バンティにショットガンを見せようとしたところ、銃をしまっている棚から息子の銃が消えている事に気が付いたハモンドは慌てた様子でその場をお開きにして2人を店から追い出します。
グレースに司祭訪問してジョンについて知っているか聞くと、東アフリカ郵政公社で父親の同僚だったそう。
パブで飲んだくれるジョンに銃の話をすると、自分の指紋が付いているものだから殺人犯だと決めつけられると取り乱しており、ジョンが犯人ではないと考える神父は遅れてやって来たマロリー警部補から彼を逃してやりました。
確かに、手袋もせず指紋を残して強盗殺人を犯すとは考えにくいのは事実です。
宿のパブの店主〈ジョージ〉によれば、ジョンが店に来たのは昨日の朝が初めてで、オルダス宛の小包みを届けてさっさと帰ったそう。
部屋には小包みの箱すら無い状態だったのは逆に不審で、宿のゴミ箱を漁ってガンオイルの臭いが染みついた梱包材が見つかり、やはり中身はあの銃で間違いないようです。
誰が何を持って行ってもガラクタ同然だと言われて驚くほどの安値をつけられた事に憤慨して、教会のお宝を手に自らおとり捜査を行ったマッカーシー夫人のお手柄で、コリンズもまた、昔郵政公社に勤めていたという経歴が思いがけず発覚しました。
総督主催パーティーへの招待状を持って話を聞きにカウンティ・フェアへ足を運んだブラウン神父とバンティでしたが、ショットガンを持って乱入してきたジョンが「お前が捕まらなかったら僕が絞首刑になる！」と言って自首を要求。
逃げ出したコリンズはバンティが追い、ブラウン神父はその場に残ってジョンから真実を聞き出します。
東アフリカ郵政公社で切手の彫版作りを担当していたジョンは、同僚だったオルダスの提案で、キリンの模様を逆さまに彫った“タンガニーカ・グリーン”と呼ばれる非常に貴重な切手を偽造していました。
全てはグレースのためで、医者を志す彼女の未来を支えるためだったそう。
4枚だけを懐に入れて、人目につかぬよう1年後に英国で売ろうという約束通りオルダスは戻ってきて、切手の盗難を恐れたジョンは彼に護身用の銃を届けたという経緯が。
しかし、宿でコリンズに会ったオルダスは、かつての同僚が鑑定人なら自分達の不正行為など一発でバレるから売却は中止にするとジョンに報告。
しかしジョンの方も金に困っていて工房は差し押さえ寸前なのです。
焦ったジョンはコリンズにタンガニーカ・グリーンの鑑定依頼を出して、オルダスの部屋に忍び込んで現物を手に入れようとしましたが既に部屋から切手は無くなっていました。
ジョンから話を聞いたコリンズは、郵政局員と彫金師の組合せという時点で偽造に気が付くも、グレースが飲み物を部屋の前に運ぶ様子を見て魔が刺した結果、睡眠薬を飲み物に混入させます。
睡眠薬が効いた頃に宿に戻って切手を盗もうと企んだはずが、寝てると思ったオルダスは起きていて揉み合いになった末に頭をぶつけて気絶し、その後持病の薬との併用が祟りそのまま亡くなってしまったのです。
例の切手は招待状の入った封筒に貼られてグレースの手に渡っており、コリンズが見つけられるはずもなく。
最終的に価値が明かされた切手はオルダスの遺品としてブラウン神父の手から釈放されたグレースに渡されました。
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