アルマゲドン・タイム ある日々の肖像
あらすじ
1980年、ニューヨーク。白人の中流家庭に生まれ公立学校に通う12歳の少年ポールは、PTA会長を務める教育熱心な母エスター、働き者でユーモア溢れる父アーヴィング、私立学校に通う優秀な兄テッドとともに何不自由なく暮らしていた。しかし近頃は家族に対していら立ちと居心地の悪さを感じており、良き理解者である祖父アーロンだけが心を許せる存在だ。想像力豊かで芸術に関心を持つポールは学校での集団生活にうまくなじめず、クラスの問題児である黒人生徒ジョニーは唯一の打ち解けられる友人だった。ところがある日、ポールとジョニーの些細な悪事がきっかけで、2人のその後は大きく分かれることになる。
予告動画
「エヴァの告白」「アド・アストラ」のジェームズ・グレイが監督・脚本を手がけ、自身の少年時代の実体験をもとに撮りあげた人間ドラマ。
主人公の母をアン・ハサウェイ、祖父をアンソニー・ホプキンス、父をジェレミー・ストロングが演じた。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。
ネタバレ感想
見始めて早々に、あれ?なんだか思っていた感じと違うぞ……?という雰囲気があり、結局ラストまでなんだかなぁ、という感じのスッキリしなささがありました。
ハッピーエンドや希望に満ち溢れた結末が必ずしも好きというタイプではないので、不条理で理不尽な世の中を表したまま終わる点が悪いわけでは無いはずなのに、なんとなく釈然としないのです。
テーマは差別なのでしょうが、迫害を受けてきた歴史を持つユダヤ人と黒人という2大被差別民の絡ませ方もどこか上手くない。
見終わった後に調べてみたら監督の少年時代を元にして書かれた脚本だそうで、それなら納得です。最初から自伝的作品だと分かっていればそんなもんだよな、と思えたのですが、歴史背景を交えたエンタメ作品と考えて見てしまったのが敗因かもしれません。
とは言え、終始つまらないわけではないのです。ただ全体を通してあまりにも淡々と進んでいくし、色々起こるけれどもどこか一つを深掘りしている節がないのでぬるっと終わった感が否めないというか。
そもそも、爺ちゃんは素晴らしい人物なのでしょうが、その他の登場人物が全員壊滅的に感情移入する隙を与えてくれないのです。
機嫌の良い時は息子のために小屋をこしらえるけれど、一度キレると行き過ぎた暴力を振るう父親や、過保護気味で優しいと思いきや突き放す場面は容赦ない母親、兄も意地悪、親戚も差別発言がある……など主人公の家族周りは決して良い人間の集まりではないものの、そもそもが裕福な家庭でその点ではある程度恵まれており、すぐそばにもっと悲惨な環境で暮らすクラスメイトが居るのも中途半端です。その上、主人公の少年がこれまたただの良い子ちゃんではなく、普通の良い子の皮を被った相当の問題児だというのも全面的に応援できない要因でした。
どうせ後味の悪い感じにするならもっと徹底してくれても良かったよなぁ、と思う不思議な感想が残ります。
母親役をアン・ハサウェイがしているとは知りませんでしたが、やはりお美しい。
評価(平均点高めの設定です。)
3.8 /5 点!
概要
監督:ジェームズ・グレイ
時間:1時間55分
配給:パルコ
公開日:2023年5月12日