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White Bird: A Wonder Story

ホワイトバード はじまりのワンダー

あらすじ

いじめによって学校を退学処分になり、自分の居場所を失っていたジュリアンのもとに、パリから祖母サラが訪ねてくる。孫の行く末を心配するサラは、彼に自身の少女時代について語りはじめる。1942年、ナチス占領下のフランス。ユダヤ人であるサラは、学校に押し寄せてきたナチスに連行されそうになったところを同じクラスのいじめられっ子の少年ジュリアンに助けられ、彼の家の納屋に匿われる。クラスでいじめられていたジュリアンに全く関心を払わなかったサラを、ジュリアンと彼の両親は命懸けで守ってくれる。サラとジュリアンが絆を深めていくなか、終戦が近いというニュースが流れるが……。

2017年製作の映画「ワンダー 君は太陽」の原作者R・J・パラシオが同作のアナザーストーリーとして執筆した小説「ホワイトバード」を、「チョコレート」のマーク・フォースター監督のメガホンで映画化。前作で主人公オギーをいじめた少年ジュリアンと彼の祖母サラ、そして少女時代のサラをナチスから救った同級生ジュリアンにスポットを当てて描く。

予告動画


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名優ヘレン・ミレンがジュリアンの祖母サラを演じ、「ワンダー 君は太陽」のブライス・ガイザーがサラの孫のジュリアン役を続投。少女時代のサラは「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」のアリソン・グレイザー、サラを助ける同級生ジュリアンは「トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング」のオーランド・シュワートがそれぞれ演じた。

ネタバレ感想

前提として、『ワンダー 君は太陽』のようなポップでハートフルなヒューマンドラマとはまっっったく毛色が違います。

どこをとっても最高だった『ワンダー 君は太陽』のいじめっ子ジュリアンにスポットが当てられたスピンオフ作品ですが、実際に軸となるのはジュリアンの祖母の少女時代の回想になります。

いじめで退学になった後のジュリアンはその後荒んで陰気になり、人とは深く関わらない、意地悪することも優しくするもなく普通でいる、という自己防衛策を取っているようですが、そんな孫を見て本当に学ぶべきだったのはそんな事ではないと教えるために過去を語り始めるのです。

ジュリアンの祖母サラがまだ幼かった頃、これまで安全圏だったフランスが徐々にナチスの占領下となり、ユダヤ人だったサラと両親も穏やかな生活から一転、迫害を受け始めついには一斉検挙が行われました。

学校にドイツ軍が来た際には、当たり前のように牧師や教師が協力してユダヤ人生徒を隠そうと奔走していたことは意外でしたが、人間味があって、こういう人々があの時代にどれほどの救いだったかと考えさせられます。

しかし、どこまでも幼く下衆い、言わばいじめっ子時代のジュリアンのような存在はいつの時代にもいて、密告された人達がどうなるのかよく考えもせず、むしろ後のことを踏まえると考えてなおの行動だったのかもしれませんが、教師がユダヤ人を逃がしたからまだ近くにいるはずだ、と大声で叫ぶのです。

サラだけは唯一、命からがら逃げ延びて隠れているところをポリオでいじめられているクラスメイトジュリアンの家の納屋に匿われることになります。ジュリアンの両親もどこまでも親切で、実の娘のようにサラに接し、まだ若いジュリアンも含めて家族全員がこの事実がバレれば自分達家族も処刑されることになると理解した上で勇気ある親切をサラに与え続けるのです。

当然のようにサラとジュリアンは惹かれ合いますし、ハラハラしつつも納屋の中にしか自分の世界がなくなってしまったサラの元に通うジュリアンの2人の姿を見ていると『希望』とはどういうものかが分かってきます。

いじめっ子のクラスメイトヴィンセントはそのうちに民兵団となり、めざとくジュリアンの動きを見ていて仲間を連れて納屋にまで来てジュリアンをリンチするわ、彼が病人と共に連行されるよう告げ口をしたり、ジュリアンの荷物にサラのスケッチブックがあるのを見て納屋まで来て銃を乱射したりととことん過ぎる屑加減。

森の中へ逃げるサラを必死になって追い詰めて躊躇うことなく射殺しようとするヴィンセントを見ていると本当にゾッとさせられました。ナチスの刷り込み教育があり、全くの知らないユダヤ人に間違った憎悪を覚えるならまだしも、かつてはクラスメイトだった友人相手に、人はあそこまで残忍になれるものなのでしょうか?

全体を通してシリアスなリアルさがある中で、ヴィンセントを襲ったあの狼には急にご都合主義なファンタジー?…と思いましたが、最後まで見てみると母親の魂でもある白い鳥が伝承の中の狼を導いてくれたわけか、と納得できます。

ジュリアンとサラの想いが通じ合った矢先、見方を変えればその喜びが仇となってジュリアンには最悪の結末に。

あまりに暗い話ではあるものの、一年以上に渡る閉塞感のある納屋での暮らしの中ではジュリアンが常に大きな支えになってくれていて、ジュリアンの両親や二階に住む夫妻然り、父親との奇跡の再会然り、ところどころに希望が散りばめられているので、悲壮感で埋め尽くされるようなことがない絶妙なバランスがありました。

人への親切がいかに勇気が必要な行為であるか、命を危険にさらして人を助ける時、その親切は奇跡に近いのだと話し、そんな奇跡的な親切を自身に差し出してくれた青年ジュリアンの名前をとった自身の孫に教訓を伝えるサラ。

老婆が思い出話であり、初恋かつ悲恋を語って聞かせるという構図はタイタニックにも近しいものを感じました。

評価(平均点高めの設定です。)

4.5 /5 点!

 

概要

監督:マーク・フォースター

時間:2時間1分

配給:キノフィルムズ

公開日:2024年12月6日

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