エピソード6『安全第一』”Safe and Sound”
あらすじ
小さな町で育った少女が、社会に不安を抱きながらも、母親とともに未来的な大都市へと移り住む。セキュリティーとテロ対策が重視される都会の暮らしは初めてで、学校生活も恐怖と妄想に駆られる日々となる。しかし、導いてくれる友は思わぬ場所にいたのだ。
ネタバレ感想
原作:『フォスター、おまえはもう死んでるぞ』 “Foster,You’re Dead! ”（1955）
- 作者:フィリップ・K・ディック
- 発売日: 2014/11/07
- メディア: 文庫
全10話のシリーズなのでここから後半戦です。今のところ個人的に面白かった話は第1話か第2話でしょうか。後半にも前半を超えてくるエピソードがあればいいな、と期待しております。
アメリカでは、高度なテクノロジーを持つシミ社及び政府に支配され最先端で安全を謳う東部と、監視下におかれる事を拒否し続ける未発展な西部『バブルス』に分断されております。
今回バブルスから西部代表として、東部に1年間の期限付きで移住してきたのは政府に反旗を翻す〈アイリーン〉とその娘で16歳の少女〈フォスター〉。
サラ・コナーを彷彿とさせるアイリーンは冒頭から東部の全てに噛み付き、怒りを露わにしております。
ティーンエイジャーのフォスターは東部で新しい学校に通わねばならず、転校初日からテクノロジーに支配された高校の洗礼を受ける事に。
こちらでは『デックス』と呼ばれる追跡装置が一般に普及しており、これがないと授業がままならないどころか校門をくぐる際にボディチェックまで受けなければならない程のイレギュラーな存在扱いを受け、もちろんイジメの対象にもなりやすいのです。
デックス購入には保護者の許可がいるらしく、母親に相談するも、もちろん反体制派のアイリーンが監視社会の最たるものと言えそうな装置を許容するはずもなくむしろさっそく東部に染まろうとしている我が子に嘆き叱られる結果に。
たった一年と言えどされど一年、高校生にとってマイノリティな扱いを受ける事や疎外感は耐えれるものではなかったようで、クラスメイトに相談し、セキュリティボロボロな母親のアカウントから無断でデックスを購入したフォスター。
地元や自宅で聞かされていたような「テロは20年間起こってもいないのにプロパガンダのためにでっち上げられている」という話とは裏腹に、学校に行けば連日飛び交うテロリストのニュースが。これには何が真実なのか分からなくなるってもんです。
顧客サポートの〈イーサン〉は孤独なフォスターに対し親身になってくれて、フォスターも音声だけの彼に好印象を抱き次第に心を許していきます。
しかし、次第にイーサンの声が幻聴なのかもしれないと疑念を抱いたり、アジア系のデックス非装着なクラスメイトと仲良くなるも、彼女の父親がテロリストで、アイリーンと結託しフォスター自身を洗脳してテロの実行犯にしようとしているのだと聞かされたりえらいこっちゃで何を信じて良いのか分からない展開に。
心の拠り所だったイーサンから、大規模テロを未然に防ぎ人類を守るために一役買ってくれと叱咤激励されながら頼まれたフォスターはついに母親を騙し、爆発物を持って高校に突っ込みます。
結果として娘を洗脳していたとされるアイリーンは逮捕され、これを受けシミ社はナウ・テクと呼ばれる犯罪未然防止システムの導入と高校でのデックス着用を義務化するという大規模改革を実行しました。これはまさに高校でテロ未遂が起きたからこそ反発なく進められた政策であり、国民をこれまで以上に支配・監視するものと言えます。
ここでふんわり終わるのではなく、最後にきっちり明快に種明かししてくれるのがこのシリーズのモヤっと感を残さないポイントでもあります。
ラストには、要注意人物アイリーンの娘がデックスを購入したと情報を得たイーサンが上司と結託してフォスターをたらし込み起こるはずのなかったテロを阻止するという名目で彼女を操っている裏側が。
実際にテロは20年間起こっておらず、全ては政府とシミ社の陰謀だったのでしょう。
バブルスからの移住者でデックスを購入した新参者の小娘を巧く操る事で、厄介なその母親をテロリストに仕立て上げる事が出来れば、テロリストの脅威を間近に見せつけ恐怖心を煽る事が出来れば、疑問の声が上がる事なく政策も推し進められる、という理由でアイリーンは犠牲となったのでした。
▼Amazonプライム・ビデオで視聴できます。
月額500円でプライム会員になれば、会員特典対象の映画やドラマ、アニメ、Prime Original 作品が見放題。30日間のトライアル期間でお試しも可能。
▼次回、エピソード7
