エピソード8 “The Curse of the Aesthetic”
あらすじ
美しきミューズ、イザベラを自殺で亡くしたばかりの若き芸術家、ベンジャミン・ミルトン。彼が邸宅で開く展示会に訪れたブラウン神父たちは、無残にも顔を潰されたイザベラの彫像と対面する。ベンジャミンを溺愛する乳母リッブルは、彼と不仲の姉ケイティを犯人と断定。その直後、アトリエの前で気絶した男が発見される。
ネタバレ感想
若く美しいミューズ〈イザベラ〉を自殺で亡くしてしまった芸術家の〈ベンジャミン〉は、同じ家に居たのに彼女の変化に気が付かなかったと自分を責めています。
亡きイザベラを偲んで、高潔な魂を持つ人々をテーマとする美術展『地上の天使たち』が開かれます。
元モデルだった〈ローズ〉は、図々しくもイザベラが亡くなったからまた自分をモデルにして欲しいとやって来ますが、門前払い。
ベンジャミンと姉の〈ケイティ・ミルトン〉は不仲で、特に姉の方からの拒否反応が大きそうなのが気になります。
美術展にやって来た美術収集家の〈コンラッド・フレンチ〉は、ケイティの民宿に滞在するようです。ベンジャミンの豪勢で立派な屋敷と打って変わって、目と鼻の先にあるB&Bは貧相で、この格差が姉弟の距離を隔てている要因の一つになっていそう。
展示会でイザベラの記念碑のお披露目がなされるも、被せられていたシーツを取った彫像の顔面は悲惨に削がれ壊されておりました。
ベンジャミンの乳母〈リッブル〉はケイティの仕業だと決めつけて彼女のバッグから金槌を見つけると問答無用で出て行かせます。
混乱の中、更に男の叫び声が聞こえて見に行ってみるとコンラッドがアトリエの前で倒れているのを発見。
ランプの電線をドアノブに巻き付けるという細工がされており、外からドアを開けようとしたところ感電したようです。
このアトリエは非公開でベンジャミンしか使用しておらず、狙われていたのはベンジャミンだったのでしょう。
幸いにも手の平の火傷だけで済んだコンラッドはすぐに意識を取り戻しており、イザベラの絵があると聞いて我慢出来ずにアトリエを覗こうとしたそう。
ここでも過干渉な乳母が絵を盗もうとしたコソ泥だと罵りました。
ベンジャミンをいつまでも子供扱いする異様で歪んだ愛情が見受けられるリッブル乳母ですが、ブラウン神父は屋敷の前から窓越しに彼女がもがき苦しんでいる姿に気が付き駆け付けます。
扉を蹴破って中へ入ると、針が突き刺さって亡くなっている乳母がベッドに横たわっていました。
ベンジャミンがケイティに訃報を伝えに行くも、既に聞いていたケイティは故人を「魔女のような女よ」と評してあっけらかんとしております。
というのも、いまわの際の父親を言いくるめて財産の大半を弟であるベンジャミンに相続させた暗躍者だそうで、何故こうも姉弟間で差別があったのか分かりませんが、ケイティはよく乳母にムチ打たれたとも言っておりました。
ベンジャミンの方は姉と仲直りしたいと考えているようで態度にも表していても、ケイティはそんな気になれないといったところ。
リッブル乳母と不仲だったという噂を聞きつけてケイティのアリバイを尋ねに来たマロリー警部補。
その時間はコンラッドと一緒に居たと言って、通りかかったコンラッドも否定する事はなく。
イザベラに代わってモデルをしていたのがバンティだと知り、ローズはモデルを辞めるようバンティに直談判。というかもはや脅しに近い形です。
バンティは口煩いマッカーシー夫人から嗜められて既にモデルを断っていましたが、ローズはそんな事知るはずもないわけで。
乳母亡き後不安定気味なベンジャミンは、今度はマッカーシー夫人にモデルを依頼してバッサリ断られます。それでも食い下がるベンジャミンから、司教様からの依頼で敬虔な信者を描くのだと聞いて態度を変えたマッカーシー夫人は内密にモデルを引き受ける事に。
改めてベンジャミンのアトリエを見に行ったブラウン神父は、無数にあるイザベラのスケッチは全て顔の左半分を裂かれていることに注目。
ケイティの顔にも左の頬に引っ掻いたような治らぬ傷があり、誰が見ても彼女の仕業でしょう。
幼い頃、紙人形を作っていてハサミを持っていたベンジャミンによるもので、彼自身は人畜無害そうな雰囲気で事故だと話していましたが、姉のケイティに言わせればそれが弟のやり口なのだ、と。
仲直りのハグに見せかけて「僕が彫刻の顔を壊した」とケイティの耳元で囁いたベンジャミンは実はサイコな野郎だったわけです。
遺言に異議を唱えたケイティに撤回させるために姉を脅していたベンジャミン。
ブラウン神父は「私を孤立させて苦しめたいのよ」と話したケイティの言い分を信じることに。
昔から身勝手で残酷だったベンジャミンは、今でもケイティのものを自分のものにする節があり、土地だけでなくイザベラも元はケイティのモデルだったそう。
感電、乳母の殺人、そして新たに起こったベンジャミンが襲われる事件の犯人はコンラッドでした。
アイルランド人だったイザベラと同じく、アイルランド独特の言語を使っていた事で彼に不審感を抱いていたブラウン神父。
イザベラに魅せられていると話していたコンラッドですが、実はイザベラは彼の娘で無念の自死を遂げた娘の復讐のために動いていたのです。
イザベラに執着するあまり、乳母の協力を得てアトリエ内のクローゼットに錠前をつけて彼女を監禁していたベンジャミン。逃れた時にはもはや取り返しがつかないほど心を病んでいて自殺してしまったイザベラ。
娘の死後、友人に所持品を取りに行かせたところ化粧箱の中から日記が見つかり、彼女への仕打ちの全てを知ったコンラッドでした。
しかし、娘を愛するコンラッドもまた、彼女を人形のように扱っていたのも事実。
美しさが災いして、故郷から逃げ出しても結局はかごの鳥のような人生を繰り返さねばならなかったイザベラが不憫です。
男達は精神的に脆くカオスな末路なのに対し、ローズはバンティからの後押しでケイティの撮影する『女性の力』をテーマにしたモデルに立候補していたり、イザベラの遺言に引っかかったブラウン神父が彼女は自分の死を偽装してどこか異国の地で自由を謳歌しているのではないかという結末があったり、女性の底力を感じさせるものでした。
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