エピソード7 “The River Corrupted”
あらすじ
ケンブルフォードにシドが戻ってくる。久々の再会を喜ぶブラウン神父たち。シドは恋人のメイブを連れていた。メイブは父親のパットと共に船で生活していた。再会も束の間、シドはブラウン神父に助けを求める。パットにかけられた殺人容疑を晴らしてほしいというのだ。殺害されたのは地元の工場所有者であるロジャー。亡くなる前に、パットとロジャーが口論しているのが目撃されていた。
ネタバレ感想
シドが帰って来ました!
バーフォード繊維工場の所有者〈ロジャー・バーフォード〉が頭部に一撃を受け川辺で死んでいるのが発見されます。
遺体の口の中からは丸めたキャラウェイ宝石店の領収書が入っていて事件性が高そう。
髭もじゃになって帰ってきたシドは、〈メイブ・ロックリン〉という女性連れで、ブラウン神父達に彼女を紹介すると早速「助けてくれ」と頼みます。
運河沿いのパブ“ミラーズ・サム”へ〈ウィルソン〉を訪ねて来ていたロジャーに大勢の客の前で食ってかかり脅していた〈パット〉はメイブの父親だったらしく、この時の発言のせいで殺人容疑がかけられているそうです。
親娘で船乗りをしておりますが、パットは昨夜から行方不明で船にも戻っていないとか。
1人だけいる昔からの飲み友達は名前は分からなくても、従軍記章のついた古い大きなコートを着てお風呂に入っていない感じ、という分かりやす過ぎる特徴ですぐハリーに思い至るブラウン神父。
やはりパットはハリーのところに匿われており、とりあえず再会ができたついでに事件解決に向けた調査が始まりました。
そもそもの口論の発端は、ロジャーが金を払わなかった事だそう。
むしゃくしゃしたまま一晩飲み明かして翌朝船に戻った際に事件の事を知り、容疑者扱いを恐れてハリーのところに居た、と。
ボートは警察に押収され、ハリーのいる納屋にも警察がやって来ます。
シドと隠れていたパットは、2人とも捕まればメイブが1人になってしまうから……とシドに娘を任せてブラウン神父に事件解決を頼んでくれるよう託すと自ら警察の前に。
警察からの聴取で、バーミンガムにある宝石店について聞かれているパット。
1週間前代理で首飾りを受け取ったパットはロジャーに商品を配達し、しかし料金を支払ってくれなかったという経緯を正直に話すも、それが動機で殺したのだと言われてしまいます。
友人の無実を信じたハリーは、パットに頼まれるまま一晩一緒に居たという嘘のアリバイを証明してしまったらしく、とにかく何か訳アリなのでしょう。
留置所のパットを訪ねたブラウン神父は、配達物についての真実を聞き出します。
ロジャーの工場に石炭を運んでいたところ、箱の引き取りを頼まれ1ポンド払うという約束だったはずが支払いを拒否されたこと、中身は24金の首飾りで高価な品だったこと、別の宝石店に持って行き安物と交換して差額をくすねたことが明らかに。船の修理代が必要で焦っていたパットは詐欺行為をやらかして、ロジャーに一目でそれを見抜かれていたのです。彼が支払いをしなかったのは当然の事で、それも分かっているパットは自分自身に腹を立ててヤケ酒に走っておりました。その夜の記憶は曖昧だそう。
そうこうしているうちに、ボートから押収された木槌についていた血液が被害者の血液型と一致し、パットには動機、凶器、機会が揃ってしまいました。
パットの足取りを辿って無実を証明するべく、ブラウン神父とシドは運河へ。
近場のミラーズ・サムを調べるのはブラウン神父が、工場の女性達に聞き込みをして殺害動機のある者を探るのはシドが担当して、昼にバーフォード邸で落ち合う約束をして二手に分かれました。
パブの地下を調べていたブラウン神父は従業員の〈ポリー・ベビントン〉と出くわし、夜に居たパットに毛布をかけてやったのは彼女だと香水の残り香で気が付きます。
店主のウィルソンさんにバレるとクビにされるから夜中にパットが勝手に出入りしていた事は黙っていたそうです。
工場の職を失ってこの仕事までなくすわけにはいかないから黙っていて欲しいと頼むポリー。
彼女はバーフォード繊維工場で働いていたところ、服を盗んだと上司に疑われて証拠もなく解雇されていて、行き場のなくなったポリーがパブで働けるようウィルソンさんに口利きをしてくれたのはロジャーだった、と。
この話を聞いたブラウン神父と、工場の女性達から噂話を聞いて来たシドは2人ともポリーとロジャーの不倫関係を疑います。
奥さんに関係がバレるのを恐れて厄介払いすると同時に償いでパブの仕事を見つけてあげたけれど、女性の恨みは怖いという説も有り得ますが、それよりバーフォード夫人の方が怪しいですね。
真相はと言うと、ロジャーはポリーの父親でした。
かつてバーフォード工場に勤めていた母の遺品整理中に日記を見つけたポリーは数週間に自分と元雇用主の親子関係を知ったばかり。当時ロジャーはまだ独身で、ポリーの母親は既婚者。
妊娠をして困っていたポリーは自分達が親子だと必死に説明して助けを乞うていたのです。
子どもを授かれなかった妻を傷付けたくないからポリーとは関われないというお詫びの印にロジャーは首飾りを贈っておりました。
仕事を与えてもらってこれに頼らなかったポリーは首飾りを返して最期の別れを済まし、2人はお互い納得した上で円満に今後の身の振り方について同意していたはず。しかしその直後に事件が起こってしまいました。
ポリーが返したはずのあの首飾りを持っていたのはメイブ。
彼女はこれを売って弁護士費用を工面しましたが、姿を消したメイブの後をつけていたバンティに何故首飾りを持っていたのか糾弾されることに。
運河沿いの船の近くに落ちていたのを見つけたポリーは、父に不利な証拠として使われると考えて警察に届けなかったそう。
現在容疑者とされているパットが金銭問題が拗れて殺害したのだとすれば、首飾りをその場に捨ててきているのはおかしな話です。
これは嫉妬による衝動的な犯行で、夫とポリーの噂話を聞いたバーフォード夫人は首飾りの領収書を見つけて我慢できなくなってしまいました。
出かけて行った夫を尾行し、ポリーと一緒に居るところ、親娘の最期の別れのキスをはたから見て男女の関係だと勘違いし、帰り道に通ったパットのボートで木槌を見つけるとそのまま夫を殺してパットに罪を被せていたのです。
今でもまだ不倫を信じて夫を恨んでいる様子の夫人にブラウン神父は全てを話します。夫婦が強く望んでも出来なかった子どもでも、妻を愛し傷付けたくないという一心で関わりを持たずその場を助けるだけにとどまったという真実を聞かされたバーフォード夫人。
彼女が自白した事でパットは無事に釈放。
全てが片付いた上でシドは跪きメイブにプロポーズしようとしますが、本人から止められてしばらくはのんびり船で旅しながら愛を育もうという事に。
またシドが行ってしまうのは寂しいですが、あのシドが本当の愛を見つけられたようなのは何よりの朗報でした。
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