エピソード6 “The Devil You Know”
あらすじ
マロリー警部補はケンブルフォード警察署の警部補に再応募することになり、地元との関わりを証明するためボウルズのチームに入会する。そんな折、試合の観戦に来ていたメンバーの弟が絞殺された。殺されたのは第二次世界大戦後、ナチの残党狩りをした経歴を持つ刑事だった。マロリー警部補はブラウン神父に協力を頼み、犯人捜しに乗り出す。
ネタバレ感想
赴任期間が終了し、ケンブルフォードの警部補として再応募しなければならなくなったマロリー警部補は、地域との関わりの実績作りのためにボウルズに参加しています。
新入りのマロリー警部補はクラブの会長〈エリック・ウースター〉や、主将の〈ロジャー・フロービシャー〉とダブルスを組む〈シャーリー・クリーガー〉らを紹介されています。
そして、お馴染みのマッカーシー夫人はここでも会計係として働いている様子。
この週末実家に帰ってきているロジャーの弟〈アレック〉もボウルズの会場に来ていますが、兄弟仲は険悪だそうです。
第11機甲師団に在籍し、ナチスによる強制収容所を解放した経歴を持つアレックはシュッとした風格のあるハンサムで、あっという間にのぼせ上がってしまうシャーリー。
アレックと散歩に出たシャーリーが狼狽えた様子で1人戻ってきて、その直後に女性の叫び声がしてアレックが殺害されているのが発見されました。
アレックの遺体から出てきた身分証明書で、彼がロンドン警視庁の副警視長だと分かったマロリー警部補は厄介な事になったと頭を抱えております。
戦前は捜査課の刑事で戦時中は第11機甲師団、休戦後は戦争犯罪委員会付の軍警察を経て現在の警視庁副警視長の地位に着くというゴリゴリのエリートの死で、上層部からは何としてでも犯人を検挙しろとお達しが出ているようで、本部からは〈アイアンサイド警部補〉が指揮を執るため派遣されて来ました。
検視結果によれば、背後から効率的に締め上げられたのが死因だそうで、プロか専門知識のある人間から競技用のヒモを使って殺された事が分かります。
何年も疎遠だったアレックが実家に戻って来たのは、亡き父の遺産相続の件があったからで、アレック亡き今唯一の受取人となったロジャー。そんなロジャーに対して、「自分が殺したと白状なさいよ」とマロリー警部補の前であっさり言い放つシャーリー。
担当を外されたマロリー警部補は、本部の刑事に手柄を渡してなるものか、とブラウン神父の動向を気にして何か情報があるならまず自分に
知らせるよう要求します(笑)
目撃者で容疑者になる可能性もゼロとは言えないマロリー警部補がルール上担当を取って代わられるのはまだしょうがないとしても、アイアンサイド警部補はこのケンブルフォード署の警部補職に応募する気らしく、本格的にマロリー警部補のライバルになるという因縁の構造まで出来上がってしまい、クリスマス休戦が再来しそうな予感。それにしてもマロリー警部補、ツンデレなだけで意外とこの地に愛着があるのですね(笑)
警察署でブラウン神父が事件についての情報があるとアイアンサイド警部補を訪ねるも門前払いされているのを別室からこっそり盗み聞きしていたマロリー警部補は、教会へ。
なんだかんだで普段から交流のある相手から先に情報を渡せと言われていても何の躊躇もなくアイアンサイド警部補を訪ねるのも、後任に取って代わられるのを何としても避けたいと話すマロリー警部補を見るや「我々の助けを求めているのですね?」とやや上から物を言うところも、ブラウン神父は結構Sっ気のある駆け引き上手です。
マロリー警部補が屈したのを見て普段の高飛車な態度に多少は溜飲が下がったマッカーシー夫人が話し始めます。
試合の前日、バンティとマッカーシー夫人は教会の広報誌を配っていたところ、フロービシャー兄弟がシャーリーについて話している場面に出くわして2人と話していました。
その時点でボウルズの試合を観に来る予定はないと言っていたアレックは、渡された広報誌を見るなりやはり参加を決めており、ノートに何かを書き留めると広報誌のページを破って残りを手近にあったゴミ箱に捨てていたのをバンティは見逃しません。
破られたのがどこのページなのか特定するためにフロービシャー家の近辺を彷徨いてゴミ箱を漁っていたのですね。
一方、挙動がおかしかったシャーリーの目撃証言も上がっており、警察に話を聞かれたシャーリーは散歩して和やかに話していたところ突然アレックに襲われそうになったので抵抗して逃げて来たのだと答えました。
しかし、アレックについて良く知るロジャーはそれが嘘だとすぐに気付きます。どうやらアレックはゲイだったのでしょう。
警察が去ってから、なぜ嘘をついたか聞くロジャーにシャーリーは真実を打ち明けていて、アレックをランチに誘うもバッサリ断られてプライドが傷付いたという話。
マッカーシー夫人は噂好きの情報ネットワークを使って、アレックが千切ったページを戦争省宛に郵送した事まで突き止めています。
ここまで突き止めれば、手紙の内容を調べるのはマロリー警部補の役目でしょう。
警察署に忍び込むようにして証拠品袋に入ったアレックの手帳を拝借してくるとわざわざ司祭館に持って来て、ブラウン神父は古典的な方法で手紙の内容を導き出します。
そこには『ついにトイフルが裁かれる』と書かれていたようで、トイフルとはドイツ語で悪魔を意味するのだと教えるバンティ。
戦争省がマークするドイツ人と、ナチの残党狩りをしていたアレックの経歴を鑑みると、破られたページに載っていた写真の中に映る該当人物はただ1人。自称『自由ポーランド軍』に所属していた歯科医のエリックです。
彼を訪ねてそれとなく揺さぶりをかけるも大して動揺は見られませんが、ブラウン神父は腕の傷痕について訊ねます。
腕の内側に血液型の入れ墨を入れていたナチの親衛隊員は、戦後報復を恐れヤケドを装って入れ墨を消す者が多かったそう。
そこまで指摘すると、エリックの妻で強制収容所へ入れられていた経験のある〈クリスティーナ〉は夫に過去を明かした方が良いと背中を押します。
生まれも育ちもポーランド人だったエリックですが、先祖が純血種だった事でナチからはドイツ人だと認められ、親衛隊員になるか処刑されるかの二択を迫られて親衛隊員の下級兵士となり、その後捕虜になってからポーランド自由軍になった経緯がありました。
ブラウン神父は、アレックは下級兵士を追っていた訳ではないと結論づけていて、その後すぐにクリスティーナからの通報で死んでいるエリックが発見される事に。
神父としての責務のために現場へ行ったブラウン神父は、アレック殺害を打ち明ける内容がタイプされた遺書をチラッと見ただけで、特定の文字が薄くなっている事に気がついております。
またしても現場を追い出されたマロリー警部補にそれを伝え、左手で打つアルファベットばかりが薄くなっていたけれど教会の鳴鐘人であるアレックには左手が弱い兆候など見受けられなかったとヒントを出したブラウン神父。
マロリー警部補は、ボウルズ・クラブ入会に際しての案内状に同じ特徴を見つけて、その案内状をタイプしたクリスティーナの署名に行き当たりました。
個人的にクリスティーナのところへ行って証拠を突き付けると、彼女は夫殺しを白状。
ブラウン神父達が訪ねて来た事で、夫がかつて自身の家族を皆殺しにしたナチの仲間だったと知り、エリックに睡眠薬を飲ませて自殺に見せかけ拳銃で撃ち殺したと話すクリスティーナ。
彼女もまた被害者に過ぎない、と情けを出して、心神耗弱状態での殺人だと自首する事で絞首刑にならないようアドバイスしたマロリー警部補。
しかし、思い込みの勘違いに気が付いて駆けつけて来たブラウン神父は、彼女こそが『悪魔』だったと分かっています。
腕に入れられた収容者の入れ墨は偽装で、収容所には居たものの、それは看守としてだったのです。
アレックは彼女の真実に気が付き、挑戦めいた発言で嘘がバレたと悟ったクリスティーナはアレックを始末していました。
夫のエリックは妻の正体など知らぬままただただ殺されてしまった不憫な存在です。
銃で脅され、自分の墓を掘らされるブラウン神父とマロリー警部補。
なんやかんや隙をついて無計画に森を逃げ回った挙句、まさに奇跡的な偶然で追ってきたクリスティーナが目の前で突然死亡。
神父様の祈りに神が応えたのだと信じかけていたマロリー警部補でしたが、原因は青酸カリ中毒。
保険として青酸カリを仕込んでいた義歯が、2人を追いかけて転んだ表紙に折れて中毒死に至ったというまさにミラクルでした。
アウシュビッツの元看守だった彼女は戦犯として指名手配犯されており、マロリー警部は署長から地道な捜査が身を結んだと評価されてケンブルフォード残留がほぼ確実に。
……と言うのは誇張された評価で、これをアイアンサイド警部補の前で伝えることでライバルの戦意を喪失させるという巡査部長のはからいでした(笑)相変わらず、誰よりもケンブルフォードの良心でいてくれております。
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