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劇場鑑賞≫≫Tully タリーと私の秘密の時間

 ポスター/スチール写真 アクリルフォトスタンド入り A4 パターン3 タリーと私の秘密の時間 光沢プリント 

タリーとの秘密の時間

あらすじ

 「わたし、ひとに頼れないの」―仕事に家事に育児と、何ごとも完璧にこなしてきたマーロだが、3人目の子供が生まれて、ついに心が折れてしまう。そんな彼女のもとに、夜だけのベビーシッターがやって来る。彼女の名前はタリー、年上のマーロにタメグチでイマドキ女子だが仕事ぶりはパーフェクト。荒れ放題だった家は片付き、何よりマーロが笑顔と元気を取り戻し、夫のドリューも大満足だ。さらにタリーは、マーロが一人で抱え続けてきた悩みの相談にのり、見事に解決してくれる。だが、タリーは何があっても夜明け前に姿を消し、自分の身の上は決して語らない。果たして彼女は、昼間に何をしているのか?マーロの前に現れた本当の目的とは―?

 

 予告動画


映画『タリーと私の秘密の時間』予告

 

マーロに扮するのは、『モンスター』でアカデミー賞®を獲得したシャーリーズ・セロン。ハリウッドでも突出した美貌を封印して18キロの増量に挑み、何ごとにも頑張りすぎて疲れてしまった女性の魂の叫びを届け、熱い共感を呼んでいる。マーロの“救世主”となる謎だらけのタリーには、『ブレードランナー 2049』で鮮烈なインパクトを残したマッケンジー・デイヴィス。
監督は、『JUNO/ジュノ』、『マイレージ、マイライフ』で、アカデミー賞®に2度ノミネートされた名匠ジェイソン・ライトマン。前作同様、ほろ苦い運命に直面した人々が、光の射す方へと歩き出す姿を描くが、本作ではさらにラストに驚きの仕掛けが用意されている。目の覚めるエンディングに向かって、シンディ・ローパーヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどの大ヒットナンバーも、ドラマティックな展開を予感させる。
タリーの謎が解ける時、もうひとつの物語が立ち上がり、観る者の心もケアしてくれる、ミステリアスなヒューマン・ドラマ。

ネタバレ感想

 第三子を妊娠中のマーロは、予定外の妊娠に、裕福な家庭で何不自由なく暮らす兄夫婦や子供達との間にある格差、息子ジョナの知的障害などあらゆるストレスを抱え参っていた。

序盤では子供達にブラックジョークを言う程度の余裕は見られたマーロだったが、三人目のミアが生まれ、睡眠不足や育児疲れの上、ジョナの学校からの呼び出しなど全てが上手くいっていない。

この“育児ノイローゼ”の描写がとてもよく表現されているなぁと思った。目まぐるしく変わる日常の流れの中には常に赤ん坊の泣き声がつきまとう。夜中に何度も起き、おむつを変え、搾乳をし、授乳をする。上の二人もまだ幼く世話が必要で、息子ジョナに関してはまた一段階上の見守りが必要とされているのだ。

 

冒頭のジョナをブラッシングするシーンを見て、海外ではこういう儀式的な文化がごく一般的に存在するのかな、と思いましたが、ジョナは何もかもいつも通りでなければ安心できず、食べる物も決まっていて、暗闇も大きな音も極端に怖がるという典型的な発達障害の症状が見られていて、少しでもリラックスできるように、ストレスを避けるために取り組んでいる慣習でした。

 

まだ妊娠中に兄の家に招待され、出産祝いに夜間のベビーシッターを付けてやろうと言われるも、他人に育児を任せる事を不安に思い拒否するマーロ。考えが変われば電話をするようにとメモを渡される。

 

出産が終わり、育児に追われる日々の中、ジョナの学校から支援学校を勧められる。何もかもが上手くいかず声を荒げるもどうにもできない現状の中、藁をもすがる思いで兄のくれた番号のメモを取り出す。

虚ろな表情のマーロは帰宅した夫にベビーシッターを呼ぶ事を告げた。

 

最初、初めてのベビーシッターが来たというのに夫は階下に降りるでもなく顔も見ず、挨拶もせず、妻からの話を聞くだけで違和感があったものの、ここら辺も表面上は優しい旦那だが無関心で無責任さの表れでもあるのかな、と思いました。

一晩で散らかり放題だった部屋は片付き、時にはマーロの言う良い母親像に必要なカップケーキが作られてあったり、見た目や若さから想像できないほど博識で魅力的なタリー。

 

タリーとマーロは会話を重ね、徐々に仲が深まっていく。

ある晩サングリアを飲んだ勢いで、セックスレス解消のため昔買ったが出番のなかったウェイトレスの制服コスプレで盛り上がる二人。まずこれまでの完璧さがあったにも関わらず、産後の母親にアルコールを勧めるタリーがとても意外で、その上コスプレをしたタリーの「このまま二階に上がろう」と言う発言に何故かノリノリで旦那の相手をさせるマーロにも不思議だった。

 

ある日遅刻してきたタリーはルームメイトと揉めたらしく憂さ晴らしに街まで飲みに行こうとマーロを連れ出す。マーロが運転し、タリーは助手席で話す。

二人は派手に酔っ払い、タリーはもう子守には来れないと話し出すがマーロは聞こうとしない。店の前で口論する二人を見て、何かの理由で街を出るとか夢を追うとか、一時は助けになったものの今辞めて行くだけでは大した共感は出来ないし浅さを感じるな、と思っていましたがこの話はちょっと違うラストを迎えます。

帰りもマーロが運転する横にタリーが乗る。泥酔していた事もあり、マーロは居眠り運転をして車ごと川にダイブしてしまう。

何度か海中を泳ぐ人魚の夢を見るシーンがありましたが、それと重なるように人魚となったタリーがマーロを助ける。私はこの川のシーンでやっと分かりました。

タリーとはそもそも実在せず、マーロの創り出した幻影だったのだと。

タリーと私の秘密の時間」というなんだかファンタジー臭溢れる邦題が合わない映画だな、と違和感があったのですが、全てはマーロから見た二人きりの“秘密の時間”だったのです。

夜中ずっと育児を完璧にこなしていたのも、掃除をしたりカップケーキを作っていたのも全てマーロ自身。

日々の疲れに限界を迎えたマーロが生み出した理想的で若かりし日の自分に重なる人物。人を頼れないマーロが唯一頼れる自分という存在。自分を肯定し、助け、全てが完璧、そんなタリーという人格はマーロの頭の中だけの存在でした。

思い返せば確かに兄から貰ったメモを見て子守を呼ぼうと決めたマーロでしたが、彼女が実際に電話をかけるシーンはありません。子供達とタリーが触れ合う描写もありません。夫との絡みのあるシーンはマーロにはこう見えていた、というだけで実際には彼女一人だったのでしょう。

 

病院に運ばれ過度の睡眠不足と疲労状態と聞かされても、ベビーシッターの存在を信じ、妻は元気だったはずだと夫に錯覚させるほどにマーロ自身が架空のタリーという存在に依存し、助けられていたというのが何とも言えません…

 

鬱状態の母親がどんどん元気づけられていく物語かと思ったら実際にはその真逆で、限界を迎えた人間の作り上げた表面上は楽しく見えるのに実情はその楽しさの分だけ更に哀しい、という切ないお話でした。

評価(平均点高めの設定です。)

  4.3 /5 点!

格差や劣等感、育児疲れなど様々なストレスに耐え切れなくなった母親が唯一心安らげた逃避の世界。最後まで見終わると切なさを感じざるを得ない展開でした。

概要

監督:ジェイソン・ライトマン

時間:1時間35分

配給:キノフィルムズ  

公開日:2018年8月17日 

タリーと私の秘密の時間 オリジナルサウンドトラック (180グラム重量盤レコード)

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