セカンド・ベスト 父を探す旅
あらすじ
イギリス。孤児院でクラス一寡黙な少年ジェイムズ(クリス・クレアリー・マイル)は、刑務所に入っている父を狂おしいほどの忠誠心で愛しており、父以外の誰にも心を開かなかった。グラハム・ホルト(ウィリアム・ハート)は田舎町の郵便局長を務める中年男性で、静かで孤独な日々を送っている。彼は自分が両親の失望の元だったことを自覚している。2人はお互いを愛し合うあまり、彼を受け入れることはなかった。今は母も亡くなり、寝たきりの父の世話をしながら、養子が欲しいと願っていた。ある日、養子縁組の広告を見たホルトは行動を起こし、ジェイムズを養子に選ぶ。独身男性が養子を取ることが珍しいうえに、ジェイムズには自殺癖があるため、養護施設や指導員のマージェリー(プルネラ・スケイルズ)も一抹の不安を抱く。だが、ホルトはジェイムズを迎えるべく準備にかかる。彼らは食事を共にし、キャンプに行き、釣りをする。最初は相手の様子を見るように、遠慮がちに語り合う2人。ホルトもジェイムズも様々な変化や直面しなければならない真実、そして家族となるための代償に心の準備ができていなかった。しかし、試行錯誤を繰り返すうちに、徐々に打ち解けていったかのように見えた。片方は父を愛したがゆえに、もう1人は父に拒絶されたがゆえに、それぞれに受けた心の傷と格闘する。そんな折り、ホルトの父が死去し、父の弟ターピン(ジョン・ハート)はホルトに、父を許してやれと言う。やっと互いを受け入れられるようになった時、突然前触れもなくジェイムズの父親が現れる。ジョンは刑務所に服役していたのは嘘で、エイズで余命いくばくもなかった。2人の父親を前にして二者択一を迫られ、混乱したジェイムズは家を飛び出す。ホルトは後を追って森の中を必死に捜しあて、2人は一緒に帰る。ジェイムズにとって常にセカンド・ベスト(決して一番ではない人)に甘んじていたホルトは本当の父親となり、2人は初めて親子となった。...
ネタバレ感想
42歳独身、郵便局員のグレアム・ジョン・ホルトはある日目に留まった広告から10歳の少年を養子にと希望する。
グレアムが紹介された少年は幼少期、罪を犯し警察から逃げる父親に連れられ8日間を共に過ごした後、自首した父親と別れ養護施設で育ったジェームズだった。
ジェームズは難しい年頃であること以前に、過去のトラウマや実父からの偏った愛情の呪縛や、実母の自殺など深い心の傷を抱えており、自殺未遂を起こしたり、脱走の常習犯で、かつて父と過ごした8日間のように穴に隠れて逃げ回ることもしばしばあったよう。グレアム自身もごく普通で仲の良い両親という一見幸せに見える環境で育ってきたが、親から触れられずある意味で愛情をかけられなかった経験を持っている。ジェームズは時には手に負えない荒れ方でグレアムを突き放すも、対等に接し、信頼関係を築くことで孤独を抱えた二人は徐々に心を通わせていく。
そんな中、二人の元に実父から手紙が届き、それを読んだジェームズは実父の存在やかつて交わした約束に捕らわれ、グレアムに大きく反発する。二人はまた一から関係を築き上げ、里親になることが決まり一緒に住み始め順調だった二人の元に早めに出所した実父が訪ねてくるのだ。彼はエイズで余命は数ヶ月と短く、ジェームズに会うことすら迷いますが、グレアムは彼を自宅に住まわせることを決断する。学校から帰って来たジェームズは実父と再会し、病気や余命の事も聞かされ深夜家から逃げ出し森の中へ隠れて寝てしまう。ジェームズが居ない事に気付いたグレアムは必死に探し回り、見つけた穴の中でジェームズと共に一夜を過ごす。翌朝、帰路につく中グレアムはジェームズに「2番目になる気はない 家族になるなら父親と息子だ どうするか自分で決めろ」と問いかけ、ジェームズはグレアムの手を取り、親子となった二人の後ろ姿で終わる。
邦題にあるサブタイトルの「父を探す旅」というのはなんかとってつけた感じがあります。決して孤児の少年が実父を探して冒険に出るみたいなお話ではありません。
孤独な少年と中年男性が<信頼関係のある愛情>を育てていく物語です。
とにかく子役の少年の尖った演技が目を引きました。精神的な幼さや大人に対する不信反抗、言葉や目つき。どこをとっても儚い不安定さの表現力が秀逸です。
愛情に飢えたジェームズがグレアムの愛を試すため自傷行為で傷を作り甘える様子が、荒れ狂って大人を食ってかかるような少年の印象とかけ離れていて、そこが逆に生々しく愛情の欠乏がリアルに映るのです。
介護していた父が亡くなり、思わずジェームズの前で雪崩落ちてしまったグレアムに対してジェームズが寄り添い慰めるシーンが非常に切なく印象的で、ジェームズにとってだけでなく、グレアムにとってもお互いの存在が救いになっている様が見て取れます。
実父がエイズとか余命が僅かとかそういう部分は少し蛇足だったかなぁと思います。ラストはグレアムが「2番目になる気はない。一緒に暮らすなら父親だ」という感じでジェームズに選択を迫るのですが、それだけの決心というか覚悟を示したかったという気持ちは分かりますが、ここまでトラウマを抱えていてなおかつ実父はまだ死んだわけではなく一つ屋根の下でしばらくの間共に暮らすとかそう言う事を考慮するとかなり酷な事言ってるな…と思いました。ジェームズもわりとすぐにグレアムの手を取り決意を露わに、本当の親子となって終わるというラストには、それまでゆっくりじわじわと相手のペースを考えて理解し合ってきた二人なだけに少々拍子抜けです。
家庭環境とか、子供の頃親から受けた愛情というのは生涯ついて回るもので、幼少期というものがその後の人生に対していかに重要な時期かということを改めて感じさせられました。
評価(平均点高めの設定です。)
4.0 /5 点!
淡々と進むストーリーや古臭い演出などもあり、全体を通して地味な作品ながら、引き込まれていきます。孤独な人間同士だからこそ分かりあえる「愛」や「信頼」が丁寧に描かれた作品です。
概要
監督:クリス・メンゲス
時間:1時間45分
配給:ワーナー・ブラザーズ
公開年:1995年
- 出版社/メーカー: Warner Archive
- 発売日: 2012
- メディア: DVD
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