ある少年の告白
あらすじ
アメリカの田舎町で暮らす大学生のジャレッドは、牧師の父と母のひとり息子として何不自由なく育ってきた。そんなある日、彼はある出来事をきっかけに、自分は男性のことが好きだと気づく。両親は息子の告白を受け止めきれず、同性愛を「治す」という転向療法への参加を勧めるが、ジャレッドがそこで目にした口外禁止のプログラム内容は驚くべきものだった。自身を偽って生きることを強いる施設に疑問と憤りを感じた彼は、ある行動を起こす。
予告動画
俳優ジョエル・エドガートンが「ザ・ギフト」に続いて手がけた監督第2作で、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」などの若手実力派俳優ルーカス・ヘッジズを主演に迎え、2016年に発表され全米で大きな反響を呼んだ実話をもとに描いた人間ドラマ。ジャレッドの両親役をラッセル・クロウとニコール・キッドマンが演じるほか、映画監督・俳優としてカリスマ的人気を誇るグザビエ・ドラン、シンガーソングライターのトロイ・シバン、「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリーらが共演。
ネタバレ感想
あらすじのみチラッと読んでいて自分がゲイである事に主人公が気付き悩み始める的なスタートを想像していましたが、開始早々矯正施設への入所の段階からスタートしてちょこちょこと回想が入る構成になっております。
一見理想の家族風に見えた一家が、父親が牧師という点も大きく影響しジャレッドのカミングアウトで脆く崩壊して行く様が映ります。
両親共に息子への理想像がしっかりとあってそこからはみ出さないよう変化を押し付けていった結果、矯正施設のセラピーに参加させられる事になった訳なのですが、この施設というのがとんでもない場所で、洗脳を推し進める半ばオカルトじみた矯正法で同性愛者は自分がいかに罪を犯しているかと時代錯誤な思い込みを植え付けらるのです。
こういった部分はキリスト教が絡んでくると少しややこしく生粋の日本人的感想だといやいや…と思えるのですが実際に信仰が違うと捉え方も違うのでしょう。
ジャレッドはプライバシー皆無で指導者の意に沿わない発言をすれば否応無しに罰を与えられる施設内で腐った内情に気付くも、既に周りにはそれを悟って治っている「フリ」を演じる青年も。
とにかく早くここを出るために従っとかないと延々と閉じ込められるぞというアドバイスを受けて改めてとんでもない場所にぶち込まれたと絶望すら感じます。
一昔前に精神病と診断され精神病棟に入れられれば最後、何を訴えても頭がおかしい人間の妄想で片付けられてしまうような恐ろしさも俄かに感じます。
が、しかし主人公ジャレッド、理不尽な指導者にあっけなくブチ切れセラピーの場をぷんすか怒りながら出て行きます。
そのままの勢いで預けていた自分の所持品の中から携帯を取り戻し母親に助けを求めてかけた電話があっさり繋がるのです。必死で追い回してくる施設の職員も法的な問題から手は出せないと分かった時点で携帯も持っている事だし警察を呼ぶなりとりあえず施設外に一歩でも出るなりすればいいのに、と思いますが母親が駆けつけた時には鍵のかかる部屋に押し込まれているジャレッド。
この異様な光景があったからこそ施設の実態に気付いた母親が突然覚醒し「母の愛」を見せてくれたのかもしれませんが、自分が父親を説得するわと立ち上がるもそのシーンは一切挟まれず。
終盤には突然四年後にまで話がスキップされた上、父親に突然の喧嘩腰でお前が変われと要求するのも気持ちは分からなくはないものの感情移入しづら過ぎる展開でしかなく、なんやかんやで父親が折れたのかな…?というスッキリとはいかないラストでした。
ジェンダーを題材にした作品という事で期待が大き過ぎたのか、個人的にはメッセージ性があるようでない一体何を伝えたかったのかイマイチ分からず内容の薄さが否めないという感想です。主人公の心情、施設の内情、家族の葛藤、LGBTQへの理解、などどれか一つでもいいからどこかしらにスポットを当てて深く掘り下げている面が見たかった。
終始陰鬱でどこかしらに胸糞要素を含んでいる2時間でした。
とにかくジャレッドを助けてくれたキャメロンが可哀想。彼にも何かしら救済措置が欲しかったし色々と中途半端だなぁと思ってしまう面が多くモヤモヤしながら見ていましたがエンドロール前に実話と知って納得。現実は何もかもそう上手くはいかないですしね。
そして誰もが「サイクスお前…!」となった事でしょう。
評価(平均点高めの設定です。)
3.7 /5 点!
概要
監督:ジョエル・エドガートン
時間:1時間55分
配給:ビターズ・エンド、パルコ
公開日:2019年4月19日
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