何かとサバイバル。

洋画と海外ドラマ B級グルメがすき。

映画感想≫≫ K-19: THE WIDOWMAKER K-19

K-19 [DVD]

K-19

あらすじ

1961年、米ソ冷戦の最中、ソ連国家首脳部は原子力潜水艦K-19の処女航海の艦長にアレクセイ・ボストリコフを任命した。副艦長には経験豊富なミハイル・ポレーニンが就き艦は出航。この2人の意見はしばしば対立するが、K-19は次々にテストを成功させていった。困難なテストを乗り切り乗組員たちは束の間リラックスする。しかしその直後、新たな任務の遂行中、艦内の冷却装置のひび割れが判明する。原子炉は過熱し始め、このままでは炉心の溶融が避けられない。ボストリコフはじめ乗組員は、大惨事をくい止めるべくひとつの決断を下すのだった。

ネタバレ感想

巷では『潜水艦映画にハズレなし』だなんて言われているそうですが、Uボートがかなり良かったのでこちらも見てみることに。 

axxi.hatenablog.com

舞台は冷戦中のソ連、モスクワ側の潜水艦を取り巻く物語です。

物資が足りない中突貫工事が行われ不安が残る上、出港前の段階からK19に携わる人間が10人も死んだというこの艦は『未亡人製造機』と揶揄されるほどに不吉さしかありません。序盤からそれはもう死亡フラグびんびんなのです。

艦長に抜擢されたのは、これまで潜水艦で皆に慕われるような存在だった艦長ではなく、お偉方から選ばれた人物。それも実力ではなく高官の娘と結婚して成り上がったもんだから、自身の力を誇示するために必死になっているとまで言われております。

この艦長がいざ出港しても副艦長の制止も聞かず危険な潜水訓練を敢行したり、出発早々から何が起ころうと立て続けに訓練を強いて負傷者を出したりと嫌な男なのです。

Uボートの緊迫感や艦内の狭苦しさ、息苦しさといった描写は圧巻でしたが、こちらでは原子炉を積載しているという点に大きくスポットが当てられております。

無用な限界潜水のせいで原子炉の冷却装置に異常をきたした結果、大海原の中で温度が上がり続けていつ核爆発を起こしてもおかしくない代物と壁1枚のところに閉じ込められるクルー達。

それでも祖国への忠誠心を第一に考え、自らはさておき、クルーの生死さえもその手で握り潰すような艦長には鬱憤がたまりっぱなし。

近場にいる敵国である米軍に助けを求めようにも、軍事機密をみすみす明け渡す事など出来ないと迷うそぶりも見せず直接原子炉を溶接しにいくという危険な選択をとることに。

ここからがもう凄まじいのなんの。二人1組になり、1組10分までで危険地帯に踏み込んで溶接作業を施すわけですが、さっきまで元気にしていた仲間がものの10分で皮膚はただれゲロを吐き、目が見えなくなるものも出たりと目も背けたくなる程にボロボロになって帰ってくるのです。

潜水艦の部品ですらロクなものが用意できていない中で防護服も積み込んでいるはずがなく、ほぼレインコートと変わらないようなケミカルコートを着込ませ「これで防げる」と苦しい嘘をついて送り出さねばならない歯痒さ。

訓練学校上がりの原子炉責任者は自分の前のチームの悲惨な光景を見て中へ入ることを拒否。極限状態で仕方ないとは言え、お前は行けよ!とつい思ってしまいます。

行けば確実に死が待っていると分かりながら国の、いや世界の窮地を自らの手で乗り越えようと特攻していく自己犠牲は、ただただ称賛できるほど単純な感情ではありません。

溶接が成功し、1000度近くまで上がっていた温度が徐々に下がりいく報告に歓喜したのも束の間、やはり修理は失敗で持ち堪えることができずに今度こそ米兵の力を借りるしかないという判断にも。

冷徹な暴君と化した艦長に牙を剥いたクルーが信頼できる副艦長に指揮を任せたあたりはいいぞもっとやれ!やつを止めろ!なんて思っていたのに、この副艦長がただただ人の良い漢過ぎて逆にクーデターを起こした部下を反逆罪で捕らえさせるあたりはまじかよ、と呟いてしまいました。いや、これまでの経緯を鑑みるとさすがにクーデターがいかんとしてもそこに処罰を与えるのは解せんな、と考えてしまいます。軍の規律というのは一般人には理解したがたいものです。

原子炉の恐ろしさに加えて、密閉空間で逃げ場はなく触れずとも被曝してしまう艦内、助けも呼べず孤立無援…こんな最悪の状況下で奇跡的に味方の軍に救出されるまでは良かったのですが、潜水のダメージで無線が飛ばせなくなり突如連絡が途絶えた事に関し、祖国を裏切り亡命を謀ったのではという疑惑がお国の方で浮上していたそうで、艦長は軍法会議にかけられる始末。

副艦長が必死の証言で艦長は無罪となるも、この一連の事件に関して全乗組員は口を閉ざす事を約束させられて終わります。

冒頭で二十数年間語られることは無かった、とされていた事を不思議に思っていましたがここでなるほど、と。ソ連の崩壊に伴い、仲間達を弔うためにもこの事実が語られるようになったそうです。

海中とはいえ、もしあのまま爆破していたら…とか、修復作業にあたったチームはやはり全員が一週間以内に亡くなってしまった事に関し、戦時扱いもされず事故死として処理された無念や、彼らの帰りを待っていた恋人達のやり切れない感情など、考えれば考えるほど史実はくるものがあります。

心の入れ替えや連帯意識があったのは分かりますが、艦長が最初と打って変わってやけに『俺たちの艦長』的なポジションに収まっていたのはなんだか不自然に感じましたが。いや、鬼艦長にめちゃくちゃ文句言うてましたやーん、そもそも極限状態でもないのに無茶したからこうなったわけですやーん、と自分なら根に持ってしまいそうです。

評価(平均点高めの設定です。)

 4.2 /5 点!

 

概要

監督:キャスリン・ビグロー

時間:2時間18分

配給:日本ヘラルド映画

公開年:2002年

K-19 [DVD]

K-19 [DVD]

K-19: The Widowmaker

K-19: The Widowmaker

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Hollywood Records
  • 発売日: 2002/07/10

プライバシーポリシー