エピソード10『よそ者を殺せ』”Kill All Others”
あらすじ
広告板から死体がつるされていた。見るからに殺人事件だったが、ある政治家が暴力を勧める声明を出したことで、人々は不可解なことに素知らぬ顔で通り過ぎていく。これに疑問を感じた一人の男も、すぐさま標的となるのだった。
ネタバレ感想
原作:『吊されたよそ者』 “The Hanging Stranger”(1953)

- 作者:フィリップ・K・ディック,大森 望
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版
行き過ぎた国家権力や集団心理の残酷な面にスポットをあてたエピソード。
政治家の候補者が一人しかいないという時点で独裁性を感じますが、候補者の女性が掲げた『よそ者は殺せ』という恐ろしいスローガンに衝撃を受けた工場員〈フィルバート〉は妻や同僚にこの問題発言を聞いたかと問います。
即問題視され報道があるだろうと考えているフィルですが、世間の様子は誰も過激すぎる発言に引っかかっておらず、むしろ『よそ者』とされる女性が数人がかりで襲われている現場にまで出くわします。
街中には堂々と『よそ者は殺せ』の広告看板が掲げられ、その傍らには見せしめとでも言わんばかりの死体が吊るされている始末。
候補者が国民からの質問に生放送で答えるという番組に顔を隠し仮名を使って批判を唱えたフィルですが、彼の個人情報は筒抜けで身バレしたまま候補者に意を反した、つまりは自分から『よそ者』の名乗りを上げたようなものです。
情報統制の恐ろしさや、健康状態の管理と言われ職場の上司からつけられた器具は自在に薬剤を体内に注入する事が可能な監視兼制御装置のようなもので人権無視や不都合な存在の揉み消しが容易な圧倒的権力が垣間見られました。
最終的にフィルは政治テロ犯と見做され、あの広告看板に吊るされていた死体と同じ末路を辿る事になってしまうのですが、誰もその事を気にも留めていない救いの無さも。
全て設定や時代背景が異なる10エピソード、それぞれが凝っていて短時間で気軽に見られる映画といった感じでなかなか面白かったです。
第5話からの後半を合わせて考えてもやはり、インパクト抜群だった第1話か、脚本の良さと丁寧な作り込みを感じた第2話が良かったですかね。
トータル・リコール [ フィリップ・キンドレッド・ディック ]
▼Amazonプライム・ビデオで視聴できます。
月額500円でプライム会員になれば、会員特典対象の映画やドラマ、アニメ、Prime Original 作品が見放題。30日間のトライアル期間でお試しも可能。