エピソード5『フード・メーカー』”The Hood Maker”
あらすじ
高度なテクノロジーがない世界では、テレパシーのできるミュータントだけが、遠距離通信の唯一の手段になっていた。だが彼らの能力は、必ずしも歓迎されていない。人々は、テレパシーを遮断する謎のフードを使い始め、込み入った過去を持つ2人の警官が捜査に駆りだされる。
ネタバレ感想
原作:『フード・メーカー』 “The Hood Maker”(1955)
- 作者:フィリップ・K・ディック,大森 望
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版
よく分からないままに面白そうな設定を醸し出す第5話ですが、『ティープ』と呼ばれる女性の側で話しかける男の顔に見覚えが。GOTのロブ役だったリチャード・マッデンではないですか。そこまで特徴のある顔だとは思っていませんでしたが何故だかすぐにロブだと気付き更に期待値が上がります。
ティープとは、テレパスと言う心を読む事の出来る能力を持った限られた人間の事で、この世界では新法によって彼らのテレパスを用いた捜査が認められているのだとか。
サトラレの逆バージョンですな。もちろん得体の知れない能力に加えて自分の思考が筒抜けだとなれば、ティープをよく思わない人間も多数おり過激派はティープ撲滅のデモまで起こすほど。そのデモを遠巻きに観察し、彼らの怒りの度合いや危険人物を特定するためにテレパスが使われているという皮肉も。
ロブ…もとい〈ロス捜査官〉は、捜査の相棒として一人の女性ティープ〈オナー〉と組む事に。
その読心力は凄まじく、自白を促すまでもなくターゲットの深層心理やトラウマを覗き見たりアジトの場所や仲間の特定まで一人で行えてしまいます。
今回デモに紛れて火炎瓶を投げ込んできた過激派の男を足掛かりに一斉検挙に出ると、彼らが隠していたのは謎のフードで、それに添えられていたメッセージの差出人には『フード・メーカー』と署名が。
どうやらこのフードを被っていればティープに心を読まれる事を阻止できるようで、調べによるとイオン性金属の液体素材が、ティープの傍受する電気信号を妨げる効果があるそうです。
こんな科学技術が出回っては秩序が乱れる一方で何としても阻止せねば、と捜査は進むものの、もちろん警察内部にもティープの存在を脅威と見るものが多く、彼らの能力をシャットアウトできる物が存在すると知れば動揺も広がります。
ティープはティープ同士で記憶や情報を共有できるらしく、ネット環境なんてもってのほかレベルに荒廃したこの世界では唯一の遠隔通信と言えるでしょう。
そうこうしているうちに至る所で問題のフードは無作為にバラまかれている一方で、同じ人間にも関わらず生まれ持った能力のせいで隔離され虐げられてきたティープ達もまた秘密裏に地下組織を作り上げており、ついに暴動を起こします。
同士として暴動に参加するよう圧をかけてくる他のティープ達と、彼らにとってさぞかし嫌なイメージがあるだろう他のノーマルな人間とはどこか違う、自分を安易に差別しない相棒との狭間で揺れるオナー。
ついには一線を超え男女の関係に踏み込みますが、ここでフード・メーカーに目星がつきます。
ロスは単独で乗り込み、工場とフード・メーカーを見つけ出しますが、追ってきたオナーはここで新たな事実を突きつけられる事になりました。
ロスもまた能力者で、ティープに心を読まれる事をブロックできる才能を持っていたそう。
オナーが始終感じ取っていた「あなたは他とは違う」という良い意味での違和感は真逆の違いからくるものだったわけです。
失意のオナーは仲間たちを呼び寄せ、フード・メーカーは八つ裂きにされ制作中のフードには火がつけられます。
オナーに締め出されたロスは燃え盛る炎に迫られながら何とか説得を試みるも、最後に唯一心を明け渡した彼の中の記憶は、ティープを蔑み、上司からはオナーを使って地下組織の実態を探るよう言い渡され、それに対して「どんな手を使ってでも信頼させる」と返していた裏切りそのものの記憶でした。
フード・メーカーの爺さんが言っていた「かつて自分の考えは聖域だった、心は唯一自由で独立した国家なのだ」というのはもっともで、ここが一番共感できた部分かもしれません。
思考を見抜かれ管理されるのが常の世界なんぞ発狂ものです。
トータル・リコール [ フィリップ・キンドレッド・ディック ]
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▼次回、エピソード6