エピソード6『内なる力』“All Serious Daring”
あらすじ
ジョン･スミスは、もう１つの世界では失ってしまうものがあることを知る。ジュリアナはアベンゼンからの隠されたメッセージを読み解こうとする。黒人共産反乱軍では意見がまとまらなかったが、ベルが新たな戦略を思いつく。木戸は誰に、あるいは何に忠誠を尽くすかを迫られる。それは、太平洋合衆国の命運を左右することにもなり得た。
ネタバレ感想
たとえ世界が変わったところでトーマスが死に急ぐ運命を変えられなかったスミス元帥は、約束の48時間が経ち一旦元の世界に帰ってきますが、海兵隊に志願してしまったトーマスをなんとか救う為に動くことを諦めていないみたいです。
元の世界に戻るとすぐにアベンゼンに会いに行き、「干渉した場合どんな影響が出るのか知りたい」と問いますが、アベンゼンの答えは「影響ならもう出てるぞ、君にもな」というものでした。
飯島にカマをかけてとった自白の記録をしっかり録音していた木戸警部。
同じく戦争回避派として、猪口提督を土壇場で助けてやるのか？と思っておりましたが、どこでそんなに恨みを募らせたのか、「黙れ、売国奴！」とまで罵るほどに険悪な仲で驚きました。
田上大臣の暗殺が矢守総督の差し金だと分かった上で矢守側につき猪口提督を捕らえるって…軍法会議の証言の場で手のひら返して猪口提督を擁護する以外に動機が見当たりません。
敵であるBCRのエクイアーノとの密会を本気で私利私欲のためだとか裏切りによる取引だとか思っているのでしょうか？
いやいや、そこまで無能なはずがないので、今は矢守側に従順なふりをしているだけと信じましょう。
エクイアーノと言えば、密会現場を襲撃された事でBCRは猪口提督の裏切りを唱えるのでは…と心配もしましたが、実際にその声は上がっても現場に居たイライジャが「猪口の部下も撃たれたんだぞ！彼もハメられたんだ」と真っ当な擁護をしてくれております。
リーダーを失いガタつくBCRでしたが、日本が中国と戦う資源にしている原油パイプラインの存在に目をつけたベルは「ここを爆破すれば日本の燃料を断てる」と突破口を見つけ出しました。
ジュリアナは何故ここまでいつも高飛車で身勝手で独断的なのでしょうか(笑)
それだけならまだしも、困った時には当然のように他人を頼るので、周りは振り回されっぱなしなんですよね。こんなに「おいおい」感の強い主人公…あれですね、ウォーキング・デッドのリックを彷彿とさせます。嫌いじゃない。
ヘレンを味方に引き入れるというトンデモ大作戦にワイアットが反対しないはずがないですし、親衛隊元帥の妻と接触しようとするレジスタンスだなんて止めない方が不自然な状況で、「別の世界で私を助けてくれた、彼女の献身的な部分は共通してるわ」と論理性皆無で雑な説得の仕方じゃ、そりゃ戸惑いますわ。
それに諦めて自分もついて行く事にするワイアットもワイアットだ。死にたいんか。
残念な方に予想が外れて、木戸警部は不本意ながら猪口提督の軍法会議の中でも真実を話して状況をひっくり返すつもりは無かったようです。
しかし、BCRとの共謀罪だけでなく、田上大臣の計画殺人罪で有罪との判決が出ると、それは聞いてなかったとばかりに異を唱えます。
矢守としては、BCRが田上大臣の暗殺犯だとしている以上、BCRのリーダーと密会していた猪口提督は濡れ衣を上塗りするには格好の餌食だったわけですね。
そして矢守は猪口提督に銃殺隊による死刑判決を下します。
ただ、見ている側としてはあまりにも不当過ぎてさすがに死刑執行される事は無いだろう、と謎の安心感が。
案の定、処刑まで秒読みの段階で「やめろ！」と木戸警部が声を荒げ、執行を見に来ていた矢守総督に銃を向けると「田上大臣暗殺の容疑で逮捕する」と宣言します。横から出てきた真の暗殺実行犯である飯島大尉には容赦なく銃弾をぶち込み黙らせ、矢守総督は捨て台詞を吐きながら連行されていきました。
秘密警察の〈マーサ〉の監視にうんざりするヘレンは、帰ってきたスミス元帥に不満を漏らし抗議しますが、今やナチスの申し子かのように洗脳教育された下の娘エイミーがそれをコッソリ聞いている事に夫婦は気が付いておりません。
ジュリアナは、ナチスのプロパガンダに使われるアベンゼンがテレビで話す様子から隠されたメッセージがあると確信して何やら謎解きをしておりましたが、その結果『スミスは扉まで列車で行った』という暗号文を導き出しました。
- 作者:フィリップ・K・ディック
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▼次回、エピソード7
