エピソード10『神の炎』“Fire from the Gods”
あらすじ
ナチスの侵攻が迫り、黒人共産反乱軍はその備えをしている。木戸は必死になって息子を捜す。チルダンはユキコに再会するため、あらゆる手段を講じる。ヘレンは夫を裏切るべきか選択を迫られる。そんな中、彼女とジョンは“入り口”へ向かう列車に乗り込む。そしてその列車をジュリアナとワイアットが待ち構えていた。
ネタバレ感想
なんだかんだでもう最終回となりました。
北米長官にまで登り詰めたジョン・スミスは、国民に向けての方法で再びアメリカが一つになると知らしめます。
あれよあれよという間に統治権を持ち、明らかに公正な手段だけでなくどす黒い陰謀の渦中に足を突っ込んでいるであろう夫へ色々と追及する前に、ジョンの方から「明日ポコノに行く、全てを明らかにするから君も一緒に列車に乗ってくれ」と言われてしまってはヘレンも一先ず様子見するしかありません。
『火の十字架作戦』なるものが進められているらしく、既に第1〜4段階までの計画書が練り上げられており、ちょうど第5段階に関する書類もベルリンから到着したようです。
マーサとやり合ってナイフでスパスパされていたレジスタンスの男はワイアットだったのか。ポジション的にワイアットっぽいものの、それにしてはあまりに老けているし別人かと判定しておりましたが、傷だらけの重症を負っている様子を見るに本人だったようです。
ジュリアナサイドのレジスタンス達は400人で扉に襲撃を仕掛けるつもりでいるそうですよ。
見張りのBCRを蹴散らし、木戸を吊るそうとしていた白人の男達がまーたやって来てガス室の存在がバレてしまい、今度こそ殺されるかと思いきや肝心のガスが空っぽ。
ついにガス室のドアが外側から開けられ、男の隙をついて持っていた銃を奪い形勢逆転の木戸警部。しぶといなー(笑)
この男達は新たなキーパーソンかと思っていましたが、どうやらユダヤ狩りならぬジャップ狩りでウサを晴らすチンピラみたいなものなんですかね?
これまで死の瀬戸際に居たとは思えぬ足取りで大神の元へ直行し「息子を返せ!」と威嚇射撃も躊躇無しの木戸警部はさすがの精神力。
ヤクザの所有する日本行きの漁船に密航させて貰う代わりに骨董品ごと店をくれてやると交渉に来ていたチルダンも、またえらい場面に居合わせて…(笑)
最高顧問として大神の右腕になる事を条件に徹をしてもらう事で合意し、憲兵隊のボスがついにヤクザに頭を下げ、指を詰めるまでに落ちぶれてしまいました。まあ、憲兵隊もそもそもヤクザみたいなもんだったので大した違いは無いかもしれませんが。
ジェニファーとヘレンの熱演シーンはなんだか白々しい気持ちで見てしまいました。
ジェニファーが思春期特有の悟りの開き方をしているというか、トーマスの事を「大好きなお兄ちゃん」と言っておりますが兄妹の仲が特別良かった記憶はありませんし。
完璧に洗脳されてこましゃくれたガキ感満載のエイミーも嫌いですが、親の葛藤も知らないで善と悪の二極しか考えられず陰謀論に気が付いた自分は周りとは違う!的な厨二感満載のジェニファーもなんだかなぁ。誰よりも自分を守ってくれた存在に対して「ママみたいにならない」ってそりゃひでーや。父親を人殺しだと責めるならまだしも、ヘレンは母親としては愛情深くてそこまでの極悪人でもないと思いますがねぇ。
ヘレンは再び夫の書斎に忍び込み、引き出しの中から『人種純血性推進室』と書かれたファイルを取り出し、その中にあった『第5段階 西海外 和平と浄化』なる計画書に目を通します。
その内容は、人種別の人口分布や強制収容所予定地が示されたマップなど、アーリア人以外の種族を排除するこれまでのナチスの傾向に拍車をかけたものでした。
護送車やガス室、焼却室などあまりに非人道的な計画の詳細を目の当たりにし、夫が進めようとしている計画に息を飲むヘレン。
元はアメリカ人のスミス夫妻なので、当然ジョンが長官になれば人種淘汰の政策は無くなるのかと思っていましたが、そう簡単なものでもないみたいですね。
ヘレンはジュリアナに連絡を入れ、「何かが起こる前に娘達をモンタナにいる弟のもとへ連れて行って」と前置きをして、夫が乗るポコノ行きの列車の時刻を教えました。
ヘレンは列車に乗っての遠出を辞退しますが、直前にマーサの行方不明とレジスタンスに殺された可能性が高いとの報告を受けていたスミス長官は妻に疑いがあるのかないのか、有無を言わさぬ態度で怪しまれないようついて行くしか無くなります。
ヘレンは夫から「正直に言ってくれ、レジスタンスから接触があったか?」と問われ「あったわ、ジュリア・ミルズにデパートでトーマスの話とフィルムの存在を聞いた」と正直に答え、一体どういう事なのかと問い詰めます。
きっとマーサの事を聞いたのでしょうが、いきなりジュリアナやトーマスの名前が出てきて想定外の答えだったのか、動揺しながらも別の世界でトーマスが生きていることや、扉からそちらの世界に行けるから目で見て確認して欲しくて連れて来たのだと力説するスミス長官。
あれ?でも別の世界ではジョン・スミスが殺されて居なくなったからこちらのスミスも渡れたのであって、ヘレンはあちらの世界でも健在ですよね。
さすがにそんなうっかりミスをする筈もないし、まさかこれに乗じてヘレンを亡き者に…!?と勝手に暴走気味になっておりましたが、別の考えがあり、なんとトーマスをこちらの世界に連れてくるそうです。
そうまでして息子を入隊から遠ざけようとするなんて…ただ、スミス長官はトーマスを連れてきたまま帰すつもりなく、このままこちらの世界で家族として暮らしていこうとしているようで、だいぶ常軌を逸脱しております。
自分達に子供を育てる資格はないしそんな事は絶対にダメだと強く否定したヘレン。この二人の関係性はトーマス安楽死事件直後の事を考えると完全に180度ひっくり返ってしまってますね。ヘレンの方が危うい感じだったのに今ではすっかりジョンが病んでいる様子。
ヘレンと言い争いになりすっかり意気消沈しているところに空挺部隊の準備が整ったと連絡が入り、投げやりな勢いのままうっかりBCRが占拠するサンフランシスコへ出撃命令を出したスミス長官。あーあ。
その頃ジュリアナ達は、帝国の列車が通る巨大なレールの柱の下にせっせと爆弾を仕掛けておりました。
レジスタンスの目論見通りレールは崩れ落ち壮絶な脱線を起こして大事故になった帝国の列車。
最後の最後で「娘達を託したわ、裏切り者は私よ」と言い放ったヘレンは亡くなり、大本命のスミス長官は生き残る結果に。
同じく生き残った少数の兵士とレジスタンスで銃撃戦になり、そのまま決戦の地は扉へと移ります。
一人森の中を慎重に進むジュリアナは、崖の側で呆然とするスミス長官に行き当たりました。
スミスは因縁の相手ジュリアナに別世界の事を語りながら最後には「私はこの人生を選んでしまった」と自ら引き金を引いて自害。
その頃扉を破壊しようと大量の爆弾を設置するレジスタンス達は扉の異変に気が付きます。
空を覆い尽くすほどの飛行艇に絶望しながら迎撃の構えを見せていたBCR。
しかし列車の脱線騒動で急遽捜索に出ていたヘリからジョン・スミスの死亡が確認され、その知らせがビルの元へ入ります。
すぐさま空軍に連絡が入れられ、出撃命令は撤回。
すんでのところで続々と引き返していく飛行艇を見たベルはそっと武器を置きました。
スミスの死を確認したジュリアナは一人炭坑内に入り、何度も記憶で見たあの現場に立ちます。
更に奥に進み扉を前にしてアベンゼンと再会。
そしてなんと、異変のあった扉が開き、続々とこちらへ歩いてくる人々の姿が。
すべての世界からやって来た人々?らしいのですが、こちらの世界のレジスタンス達と抱擁する場面があったりして、元はこっちで生きていた人間という事なのでしょうか?
そして笑顔で人波に逆らい扉の方へ歩いて行ったアベンゼンには『お迎え』的な印象がありました。
霊界かよ!みたいなラストでしたが…これはまた何と言うか…。原作通りの結末なのでしょうか?
せめて最後にジョンが出てくるとかなかったのか。やや不完全燃焼な終わり方ですが、これはこれでSFなのかもしれません。
最後にアメリカ魂ぶちまけたのがジョンでなくヘレンだったとはなぁ…(笑)
息子は送り出せたものの自分は残った木戸警部のヤクザ街道とか、ニコールらへんはもはや何の伏線にもなっておらず必要だったのかすら疑問です。あんなに視聴者を見方に引き込むようなキャラ付けをしていたエドがその後音沙汰無いまま完結なのもマジかよ、の一言です。
いやぁ…ラストのいまいち感は否めませんが、前半戦が面白かったのは確かですしある意味で面白かったです。
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