エピソード9 “The Truth in the Wine”
あらすじ
アントニー大佐の一族が運営するワイナリーの試飲会を訪れたブラウン神父たち。ワイナリーを見学中、圧搾機の内部から、グレイソン夫人の息子が可愛がっていた犬の死骸が発見される。グレイソン夫人は、犬を殺したのは、移動労働者のギッブスだと断言。ワイナリーの共有権を狙うギッブスは大佐と口論になり、その日に解雇されてしまう。その夜、屋敷に忍び込んだギッブスは何者かに銃殺される。
ネタバレ感想
〈アントニー大佐〉が開くワイナリーの試飲会にやってきたブラウン神父達。
見事なワイナリーを作ったフランス人の醸造家〈グレゴアール・ビセット〉による記念すべき1杯目のお披露目が始まります。
しかし、いざ圧搾機から白ワインを注ぎ出すと、初めこそ透き通るような色だったグラスがどんどん赤く染まっていきます。
不審に思い中を除くと、白ワインの中に浮いている犬の死体が。
未亡人〈グレイソン夫人〉の幼い息子〈トム〉が飼っていたこの犬は、大佐からのプレゼントだったそう。
犯人は労働者の〈ヘンリー・ギッブス〉で、何かしらの弱みを握ってアントニー大佐を強請っていました。あまりにしつこいギッブスに我慢ならなくなった大佐は脅し返してギッブスを解雇に。
アントニー大佐は、母〈レディ・エドナ〉の様子が近頃おかしいのだと心配していて、相談されたブラウン神父は翌日、老化現象について書かれた解説書を持って再び大佐を訪ねます。
すると、昨晩殺されたらしいギッブスの件で、先にサリバン警部補が来ているではありませんか。
そういえば、使用人の〈エミリー〉はギッブスから無理矢理迫られており、彼女と恋人関係だったグレゴアールがギッブスに憎々しげな視線を送っていました。
空襲で親を亡くして孤児になり、必死に生き抜いてきたエミリーには相応の前科もあるようで、襲われかけて反撃した際の噛み痕も手伝って不利な状況になるかと思いきや、いかに自分が大佐に恩があるか話すうちに矛盾が生じて、アントニーが疑いの目を向けられることに。
アントニー大佐が自殺未遂をはかったため、彼を送検するためにも勝手に死なれては困るサリバン警部補は、二度と馬鹿な真似はしないよう大佐を説得してくれ、とブラウン神父に頼みます。珍しい利害の一致です。
既に色々と分かっている神父は、アントニーに「本物の大佐はチュニジアで死亡している」と決定的な事実を指摘。
アントニー大佐のフリをしていたのは〈ジョゼフ・ホーキンズ軍曹〉で、病院で出会った大佐はワイナリーを開く夢を熱心に語っていました。その後、死期を悟った大佐本人が顔がそっくりなホーキンズ軍曹に話し方や生い立ちを学ばせて後の人生をそっくり託していたのです。
ここでも利害の一致があり、ホーキンズ軍曹自身も人生を変えたいという思いを持っていたのでこらを承諾して本物の大佐の訃報を差し止めていました。
そこへ本物の大佐と知り合いだったギッブスが現れ、口封じのために仕事を与えるも要求は過激化。しかしそれでもギッブスの事は殺していない、と話すホーキンズ軍曹。
銃声が聞こえて駆け付けた書斎にはエミリーが居て、自分が雇った男のせいで襲われかけた彼女を守るために絞首刑を受け入れるつもりだったのです。
なりすましをしていたのはグレイソン夫人も同じで、彼女は戦争で死んだ恋人の苗字を使うことで息子を私生児にすまいと偽っておりました。
そんな親子の恩人でもあるこの家の主人達に忠義を尽くしてきたという気持ちは本物で、出納帳をつけていて屋敷が破産寸前だという事を知っていたからこそ、保険が下りるのを見越した彼女は、事件のどさくさに紛れて金庫から給料用の現金を盗んで『ワインの売り上げ』という名目で預金をしています。
トムの犬をうっかり車で轢いてしまったグレゴアールは、途方に暮れているところをギッブスに見つかり、ワイン造りの仕事を失うまいと後処理を言われるがままギッブスに任せていました。醸造家としては素人だったのに、ドライバーとしての腕について言及してある推薦状を、フランス語が読めないホーキンズ軍曹が勘違いして雇い入れたとかで、古本を読んで勉強するだけで見事なワイナリーを作り上げてしまうのはむしろ才能です。
エミリーはエミリーで、ギッブスが書斎で撃ち殺されているのを見て犯人は大佐だと勘違いした結果、恩義のある主人を守ろうとして嘘をついていました。
誰もが嘘をついていて、しかもそれが保身ではなく相手を守るためのものだったといういくつものすれ違いがあったのです。
解雇された腹いせに強盗して去ろうとしたギッブスを殺した犯人は、レディ・エドナです。
そして彼女もまた、数十年ぶりに会うとは言え、ホーキンズ軍曹が自分の息子ではない事を悟りながら、本物の息子が死んだと思いたくなくて彼を受け入れていた、と。
息子の死を受け入れられず、自分を騙していたホーキンズ軍曹に罪を背負わそうとしていたはずが、ブラウン神父からこの成りすましはアントニー自身の意思によるところが大きかったと聞かされた事でようやくレディ・エドナは警察に事情を説明。
自衛でもあったのでレディ・エドナはお咎めなく、釈放されたホーキンズ軍曹も周りを騙していようと、周りからしてみれば彼がどこの誰であろうと恩を感じている事実は揺るぎなく、全面的に許されるという結末は良かったです。
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▼次回、エピソード10