エピソード9『バク』“Baku”
あらすじ
ジュリアナとワイアットは使命のために東へ向かう。そして大ナチス帝国の極秘プロジェクトの中核に迫っていく。太平洋合衆国と大ナチス帝国の関係改善のため、田上はスミスに接触する。そしてスミスは重大な真実を知ることになる。木戸は自らの使命に決着をつける。
- メディア: Prime Video
ネタバレ感想
アメリカにルーツのあるスミス親衛隊元帥にとって、アメリカが戦勝国となった豊かな別世界はどう映るのでしょうかね。
検問所で兵士を殺してトンズラしたジュリアナとワイアットの姿はバッチリ監視映像に写っており、既に親衛隊も身元を確認済みです。
二人の生け捕りを命じたスミス元帥に田上大臣から連絡があり、戦争問題に直結する石油禁輸措置について公的な会談の場を設けたいとの事で、「ニーベンベルト計画の事も知っていますよ」と揺さぶりをかけられすぐに中立地帯で落ち合う運びとなりました。
「田上に会って、日本がニーベンベルトについて何を知っているか聞き出せ」とヒムラー長官。ついでに中立地帯でアベンゼンの行方を掴んでくるよう言い渡され、スミス元帥は家庭の心配事を残しながら即日発つことになってしまいました。
ワイアットが頼った昔馴染みらしい〈チャック〉は、ジュリアナがフィルムで見た狙撃の名手と同じ人物で、バーで飲んでいるところにこれまた友人の女性〈ルデット〉がジュリアナに対する警戒心剥き出しでやってきます。
初対面にも関わらず狙撃が得意だと不敵に言い当てたジュリアナですが、協力してくれている相手の友人に対する感想が「彼は使える」の一言というのは、なんだかなぁ(笑)
バーの店主も友人のようで、彼の店でフィルムの上映会が始まると、客は見た事も無い世界に興奮してアンコールまで起こります。
その後チャックとルデットを交えて本格的に炭坑の入り口を吹き飛ばす作戦の詳細を話しますが、ルデットは「この話が事実だとしても、なぜ私たちが別の世界をナチから救うわけ？何の得もない」と否定的かつごもっともな意見です。
ルデットが反論している時のジュリアナの文字通り過ぎる見下した視線が…(笑)
ワイアットに目配せし自分はその場を離れ煙草をプカーッとふかしているのも態度悪過ぎてもはや笑えてしまいます。
昔馴染みの友人同士サシで説得した方が良いというのも分かりますが、ジュリアナの態度がワイアットをアゴで使っているようにしか見えないんですよね(笑)「さっさとこの話が通じない女を黙らせなさい」という心の声が聞こえて来るようです。
それに比べて、ワイアットの過去に何があったのか知りませんが、「ジュリアナが戦う理由をくれた」と話すワイアットに「それは“希望”ね 昔のあなたが戻ったみたい、彼女に感謝する」と予想外な言葉を残したルデットがかなり大人に見えました。
エドは自分がゲイだという事だけでなく、ジャックとの関係までもうフランクにカミングアウト済みなんですね。というか、ジャックとはその場限りな関係かと思いきやしっかり恋人同士らしいですよ。
フランクとのゲリラアートに勤しんだ帰り道にジャックの元を訪ねますが、そこでチルダンから連絡があったことやヤクザが骨董品を見つけたとジャックを訪ねてきたことを聞きます。
まさか憲兵隊が来たとは思わないしそりゃヤクザにしか見えませんわな。
そして憲兵隊であれ、ヤクザであれ、ジャックをマークしていない筈もなく、まんまとエドとジャックがイチャついている現場を見られております。
ジャックに勧められて、骨董品を取り戻して一緒にサンフランシスコに戻ろうということになり、チルダンに連絡を取ったエドは「こっちに帰ってこられない“もう一人の”友達と急いで街を出ろ」と警告され、ようやくフランクと自分に危険が迫っていることを察しました。
尾行されているとも知らずにジャックを連れてフランクに会いに行き、「チルダンにすぐデンバーを出るように言われたんだ、街を出よう」と言いますが、その隣には既に木戸警部の配下にあるヤクザの姿。次の瞬間には木戸に声をかけられ、逃げられるはずもなくそのまま手錠をかけられフランクだけが車で連れ去られてしまいました。
いくら恋人であるジュリアナの目的を知った木戸警部と言えども、フランクには面と向かって発砲された上に大規模な爆破テロで吉田を殺された恨みがあるのでさすがに許されないか…。
スミス元帥の指定でアベンゼンの隠れ家として使われていた家で田上大臣との会談がひっそりと行われます。
太平洋合衆国にいる亡命者15名のリストを渡し、「彼らを帝国に送還することをお約束します、これで名ばかりの貿易協定を立て直しましょう」と石油の禁輸措置の解除を求めた田上大臣。なんだかんだスミス元帥も戦争回避のために動いてきた人物ですし、今後この二人も協力し合うことになるのでしょうか。
ついにペンシルベニア州のポコノ山地まで辿り着いたジュリアナ、ワイアット、チャックの三人は、チャックが予め連絡しておいたNYのレジスタンスの〈ジェレミー〉と〈ポール〉と合流します。
計画に先立って、ラッカワナ炭鉱の周辺をくまなく調査する一行は、まるで要塞のような厳重警備の様子を観察。ジュリアナの口ぶり的には、記憶と同じようにマシンの被験体に扮して正面から潜り込むつもりらしいです。
仲間の爺さんから、坑内が不安定で1937年に閉鎖された第9坑道に繋がる古い通路があると聞き、確信の末にそこを目標に定めました。
中立地帯に出張の間はジェニファーの検査は延期してもらえるようスミス元帥は取り計らっていたはずが、不在の間に突然ナースがやって来て有無を言わさぬ態度で検査を進めます。
しかし注射針を指す寸前にヘレンが鬼気迫る表情で「やめて！」と制し、検査は無理矢理延期にさせました。護衛の兵士も同席しているし、確実に報告されるのにもう取り繕う余裕もないほどに検査に怯えております。つまりは国政批判だと判断されてもしょうがない状況なので、スミス元帥不在の間にヒムラーの耳に入り対処されてしまわないか心配です。
スミス元帥の指示で中立地帯中の農場が調べられ、ついにアベンゼンの新たな隠れ家が襲われることに。
キャロラインの第六感、そしてエイムスキルがやべぇ。さすがアベンゼンのそばに居る女という感じがします。
フランクは、木戸警部も収容されていたらしいマンザナーに連れて行かれました。
木戸警部はフランクの妹達を処刑した罪悪感をずっと抱えていたようで、フランクが凶行に走った原因の一つに自分が関係しているだろうと話し、フランクも怒りに任せてビルを爆破したことに対する罪の意識があるものの自分は自由だと話します。
死など恐れなくなったフランクと、名誉なき死だけを恐れていると言う木戸警部。
あの日からフランクを逃した自身の誤ちを許せなかったと話す木戸警部は、佇むフランクを残して準備してきた正装に着替えます。
そして日本刀を片手にフランクの横に立ち、フランクが静かに目を閉じたのを合図にするかのように首を斬り落としました。
せーーっかくあの惨状を生き延びていたフランクがついに逝ってしまわれました。
ただ、最後にジュリアナやエドと再会したり、ユダヤ人として認められ自身の在り方に絶対的な誇りを持ったりと、諦めからではなく本当に死を恐れる事なく最期を迎えたのは不幸中の幸いなんですかね…？
- 作者:フィリップ・K・ディック
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▼次回、エピソード10
