第7話
あらすじ
ある日診療所に現れたのは、結婚式を1か月後に控えた若き女性ロイス・パリー。成人してなお生理が始まらないことに不安を覚えるロイスは、原因を突きとめたい一心で子宮頸がん検診にやって来たのだった。
ネタバレ感想
診療所では子宮頸がん検診が行われる事になり、15人という初の試みにしては上々の予約が入っています。
検診の対象は35歳以上の経産婦だけですが、母親の名前〈ブロンウィン・パリー〉で予約を取っていた〈ロイス・パリー〉は明らかに若く、トリクシーが「あなたに子宮頸がんのリスクはないわ」と言い聞かせても、結婚式を1ヶ月後に控えているからとにかく検診して欲しいと譲りません。
何か不安があるのかと訊ねられて初めて「今まで一度も生理が来たことがないの」と悩みを打ち明けたロイス。
いくら若いと言っても22歳で初潮がまだとなれば何らかの婦人病を患っているのかも、と考えて不思議ではありません。
ターナー先生は診察で、「頸部が見当たらず膣が異常に浅い」事が分かり、困惑顔で聖カスバート病院に至急検査を要請してくれます。
今まで母親にすら嘘をついて生理が来ていない事を打ち明けられなかったというロイスですが、結婚直前で子供が産めない身体だと発覚すれば破談も十分に有り得る事を考えると更に不安が募ります。
検査に出かけたロイスは何の説明もないまま男ばかりの大勢の研修医に囲まれ内診をされ、恐怖のあまりそのまま寄った診療所でシーラとトリクシーにその日の出来事を泣きながら話しました。
彼女を気の毒に思ったシーラはターナー先生に相談し、どこまでもジェントルマンなターナー先生もロイスに同情を示し、診断結果はトリクシーも同席の元こちらで伝える事になります。
診察の結果は、『精巣性女性化症』という極めて稀な症例でした。膣が浅く子宮がないだけでなく、なんと本来なら卵巣がある場所に睾丸が二つ見つかったというのです。
つまり、外見では女性のロイスは遺伝子学的には男性に分類される、と。これまで自他共に女性として扱われ生きてきたはずで、男性との結婚まで控えている状況でこの宣告はあまりにも酷でしょう。
「両方の性を持っている」と言われて「はい、そうですか」と簡単に納得できるはずもありません。
婚約者〈ポール〉に説明できないし、子供のことを含めた将来について色々と計画済みだったのにポールに対する裏切りだと悩むロイスは、ついに「気持ちがなくなったの、結婚は間違ってる」と嘘をついて婚約破棄を告げます。
誰にも真実を話せないままにウェディングドレスを自らの手でズタズタに引き裂くロイス。
あまりの事態に娘を問いただして真相を知った母ブロンウィンは、怒りを剥き出しにしながらノンナートゥス・ハウスを訪ねてきて、対応したシスター・モニカを怒鳴り散らします。
どうやら、ロイスを取り上げたのはシスター・モニカで「当時は現役だったのだから娘の異常に気付くべきだった、助産婦としての知識が欠けてた」とお門違いも良いところな逆恨みに繋がっているようです。
ここまで動揺して怒りをぶちまけているのは母親でありながら今日まで何も気付かなかった自責の裏返しでもあり、全員が不幸で辛くなる。
負の連鎖は続き、ロイスは薬を飲み干して自殺を謀るほど追い詰められてしまっておりました。
運ばれた病院で胃洗浄の処置を受け一命を取り留めたロイスにはしっかりと救いが待っていて泣けてきます。
ずっと自分の帰りを待ち続けていたポールに真実を告げる決心をし、言いづらい話を打ち明けますが、それを聞いてなお「僕にとって君は出会った時から変わらない、結婚したい気持ちもそのままだ 子供が欲しいからじゃなくて君が欲しいから結婚する」と即断で言い切るポールの器と愛の大きさたるや…。
ロイスの悩みを通して、もっと女性が安心できる場所を作りたいと考えたトリクシーは、女性診療所での無給勤務と助産婦業を掛け持ちしたいとシスター・ジュリエンヌに訴え許可を貰いました。
ナース・クレインの愛車が不調気味ですが、意外過ぎてニヤリとしてしまうところに車に関して専門的な知識を持つ人材が(笑)
その雰囲気とテンパる新人具合からは想像もつきませんでしたが、シスター・フランシスは父からエンジンについて教わったらしく、子供みたいな彼女の口から専門用語が飛び出すアンバランスが面白い。
そんなフランシスはシスター・ジュリエンヌからの頼みで妊婦教室の『沐浴クラス』を担当する事になりますが、7歳の頃から恐怖症で人前が苦手なのだそう。事情を聞いてヘルプに入ったヴァレリーがサポートしてくれると聞いて健気に練習に励んでおります。
いざクラスが始まると頭が真っ白になって固まりかけましたが、なんとか持ち直して嘘のように軽やかにやり遂げてくれました。
車が故障中だと知ってウルフ巡査は健気にも車でノンナートゥス・ハウスまでやって来て「今日は非番だから乗せて行くよ」と必死です(笑)
ウルフ巡査とフィリスのなんだか笑える凸凹ロマンスとは違い、正統派に惹かれ合う2人の男女が。
ナース・クレインの車の整備のためにフレッドが読んでくれた〈シリル・ロビンソン〉とルシルがどう見ても意識し合っており良い感じです。
周りも分かっていてニヤニヤしながらシリルについて食事の席で話題に上げるのでこちらまでニヤニヤしてしまいます。あと、分かっているのかいないのか、なフランシスの絶妙な表情も最高では?笑
昼は整備士、夜は土木工学科の学生として二足の草鞋を履く好青年とあっという間にお近づきになり、社交クラブのダンスに誘われますが「仕事に支障をきたすようなマネはできない」と生真面目に断ってしまうルシルと、それを立ち聞きしながら残念がるシスター・モニカ(笑)
「神聖な場所で生活しているからといって制約されてほしくない」と誘いに乗るようストレートなんだか遠回しなんだかのアドバイスをして、「あの好青年にお茶を出す約束をしたのになんだ急に疲れちゃったわ、休まないといけないから代わりにお願いしても?」と茶番劇を繰り広げてまで老婆に後押しされてルシルのガードも少しは緩みましたが、根が生真面目過ぎます。
奇しくもロマンスの渦中に在る二人は同室で、「ダンスに誘われて断ったけれど承諾すれば良かった」と後悔を打ち明けるルシルに「今からでも遅くないわ」と返したナース・クレインも「私にもファンが居るみたいなんだけれど、誘われてひるんでしまった」と同じ悩みを打ち明けました。
同じ境遇に居れば自分の問題も見えやすいものです。
シスター・ヒルダの担当する〈パム〉は、夫〈ジョージ・シャープ〉が何かを隠している事には気付いていましたが、ジョージはなんと5分毎にお腹に走る激痛の事を隠していました。
パムのお産の補助でシスター・ジュリエンヌが来ていた事でジョージの痛みが発覚し、念のためにとターナー先生も呼ばれましたが、身体的な異常はなくどうやら父親になる事に対する不安がストレスとなって痛みを引き起こしていたようです。
しかし、そこまで単純なものでもなく、『擬娩』つまり想像妊娠による痛みで、知らず知らずのうちに妻と一緒に妊娠を経験していたジョージ。男性でも起こり得る話なのか…。
それほどまでに夫婦が文字通り一心同体の絆で繋がっているという事だと考えると凄い事です。
人体の不思議が濃縮されたようなエピソードで非常に興味深い話でした。
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