エピソード7『悪魔の塵』“The Devil's Dust”
あらすじ
ルースは子供の頃から、背中にアザのような症状が出ていた。ある晩、ルースの主治医だったエバンズが、急に辞めてしまう。ルースは、友達からも伝染病だと誤解され無視されていた。さらに父親ジェフリーの研究が症状の原因だと噂されていた。
※「ブラウン神父」第7話「悪魔の塵」は、放射線を題材とした内容になっております。 本作は、一般的に放射線に対する知識が乏しかった1950年代を舞台にした作品であるため、現在の理解とは異なるセリフが登場しますが、ご了承いただけました上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。
ネタバレ感想
冒頭から往診に来ていた〈マイケル・エバンズ医師〉がやや取り乱した調子で辞めてしまうところから始まります。
エバンズ医師が診ていたのは、〈ジェフリー・ベネット〉と〈エミリー・ベネット〉の一人娘〈ルース〉で、背中には無数の丸いアザが。
村ではルースが原爆症だとか何かしらの伝染病だとか言われており、友達ですら親共々ルースをあからさまに避け始めました。
父親が働く原爆研究所に通っているルースは、実験でモルモットにされているという噂が出ているのです。
原子力対策委員会が教会で開催されるチラシを見て、話し手として参加する事で村人の不安を直接解消してはどうかとジェフリーを誘ったブラウン神父。
説得に応じ、研究所の安全性を話して放射線量を測るガイガーカウンターを委員会に寄付したジェフリーですが、斬り込み隊長のマッカーシー夫人は、どストレートに医師が辞めた理由や、娘を仕事場に呼ぶ理由を訊ねています。
村人の総意を代表しての意見だとしても、「あなたの娘が村から出るまで我々は安心して眠れない」とまで言ってしまうのはデリカシーマイナス5000ぐらいの暴言で、ジェフリーが憤慨して出て行くのも当然です。
謝罪のため、ベネット宅を訪れたブラウン神父は、外まで漏れ聞こえてくるほど激しい口論になっている夫妻の声と、家の前でひどく動揺しているルースに遭遇しました。
ルースは翌日の朝に話しに行くと自分から神父に言っていたにも関わらず姿を見せないので再びベネット宅へやって来た神父。
家政婦から門前払いをくらい、はしごを使ってルースの部屋をこっそり覗くと中は荒れた様子でルースの姿もありません。
ちょうど外出していた夫妻が戻ってきて鉢合わせになり、昨夜からルースが行方不明だと聞かされます。
ブラウン神父の介入でようやく警察に捜索依頼が出され、神父も村人も総出で捜索に手を貸します。
寄付されたガイガーカウンターを持ち出していたスージーは、地下壕からの大きな反応を見つけて中にルースが居ると訴えるも、神父を呼びに行って戻ると反応は薄くなっていて地下壕を開けてみても中は空っぽ。
マッカーシー夫人は、千切って捨てられていたルースから“M.E”に宛てたラブレターを拾ってきました。
これで閃いたブラウン神父はM.Eのイニシャルを持つマイケル・エバンズの自宅へ急ぐも、今回ばかりは同じ閃きに辿り着いたバレンタイン警部補に先を越されております。
ルースの両親は、娘のエバンズに対する恋心に気が付いていながら、腕の良い主治医を失いたくない一心で年頃の子供の一過性の気持ちだと考えていた様子。
しかし、ルースの部屋から見つかった日記には一線を超えた2人の記録が赤裸々に綴られており、これを突き付けられたエバンズ医師はようやく夜中にルースが会いに来ていた事を警察に告白します。
叩かれて赤く腫れた顔をして泊まりたいと言った彼女に断り、その日の朝に渡されていた例のラブレターをその場で返したて懇願する彼女を追い帰したのだそう。
ルースの恋心に気が付いていたからこそ主治医を辞めたらしく、キスを迫られた事はあっても診察以外で指一本触れていないと主張したエバンズ医師。日記の描写はルースの願望が混じった作り話だったのでしょうか。
ブラウン神父は、娘の日記を読んで激怒した父親が予想もできない行動に出たのでは?と疑います。
ルースの父親がジェフリーではないというのは分かっていて、てっきりエバンズ医師との子かと思いきや、エミリーと関係があったのは配管工として出入りしているジェフリーの親友〈ダグラス〉だったとは。
ダグラスが黒人なので、さすがにルースの父親ではないはずですが、奇跡なのだと信じ切っている様子のダグラス。
手袋を外した彼の手にはルースと同じ症状が出ていて、死ぬ前に一度でいいからパパと呼ばれたくて自分が父親だと本人に打ち明けた結果、失踪に繋がったのです。
母親のエミリーが殺人容疑で逮捕されたと聞いたブラウン神父は、立ち入り禁止になっているエバンズ医師の自宅へ忍び込んで、無事で匿われていたルースを見つけ出しました。
ダグラスの話を聞いて不安になり、両親と衝突したルースは、想い人のエバンズ医師と駆け落ちでもしようと考えてずっと森に隠れていたようです。
無鉄砲な10代そのものなルースも、実の父親の余命が僅かだと聞かされると素直に自宅に戻る選択をします。本当にルースはダグラスの子という設定のまま終わりました。
同じ症状は出ていても、ダグラスの先が短いのは肺ガン由来のもので、ルースまで危ない訳ではないようなのは安心です。それにしても美人な少女ですな。
最後にはキッチリと、ルースを伝染病扱いして村から去るよう口走ったマッカーシー夫人の暴言も英国風にお灸が据えられていて良かったです。
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