エピソード3 “The Whistle in the Dark”
あらすじ
ブラウン神父の友人、ワイズマン教授は魔力を持つ中世の笛を競売にかけるため、霊媒師のドロシーやコレクターのリリスなど客を自宅に招いていた。教授が笛を吹くと霊が現れるが、それは教授のトリックによるものだった。しかし教授と霊媒師ドロシーが相次いで殺されてしまう。
ネタバレ感想
ブラウン神父は、バンティとマッカーシー夫人を連れてピクニックに行く道中、友人〈ロバート・ワイズマン教授〉を訪ねます。
玄関先でチラッと見えた異変が気にかかるブラウン神父は、ピクニックを早々に切り上げて1人で教授のところへ戻りました。
飾られている数々の悪趣味な美術品について聞いてみると、オカルトをテーマにしたパーティーを開くのだそう。
ほどなくして到着した〈ウィンスロップ少佐〉や霊媒師〈ドロシー・パーネル〉と息子の〈アーチー〉、美術品コレクターの〈リリス・クロウ〉はそれぞれ『笛』を目当てにここに来ている事も分かります。
『笛吹かば現れん』というオカルト書物の中に登場する不可思議な力を持つ笛の実物で、その力が本物だという証拠を見せると言って客人を集めたらしいワイズマン教授。
実際に皆の前で教授が笛を吹いてみせると、霊が姿を表すのを待つ間部屋を用意したとそれぞれを案内している矢先に至る所からざわめきが聞こえてきたり、リリスが首筋に荒い息遣いを感じたり、怪奇現象が連発します。
しかし、これらは全て教授が仕掛けておいたトリックによるもので、それを見破ったブラウン神父が何故人を騙すような事をするのか聞けば、夫を亡くした娘と孫達のために金が必要なのだそう。
ワイズマン教授は投資に失敗して無一文な上に家は差し押さえ予定なのです。
ブラウン神父とワイズマン教授が言い争いをしていると突如笛の音が鳴り響き、例の笛を保管しておいた箱を確認すると中身がありません。
慌てた教授が音のする階上へ走り出したところ、すぐに呻き声と人の倒れ込んだ音が聞こえ、ブラウン神父は教授が頭から血を流して階段で死んでいるのを発見しました。
外の嵐のせいで電話は繋がりにくく、満足に通報もできません。
ブラウン神父は4人の客人に対し、殺したのはこの中の誰かで、悪霊だと信じているものはトリックに過ぎないと説明。
6つのタイマーによって時間差で鳴るよう仕掛けられていた不穏なざわめきのレコードと、映写機と鏡の産物による霊の姿の種明かしをしていたはずが、途中でドロシーだけ姿が見えない事に気が付きます。
彼女は無事に見つかりますが、教授の小細工に怒った悪霊の仕業かもしれないと信じている様子。夜が明けるまでに全員殺されると恐怖を煽っております。
犯人の狙いは教授ではなかったと真相に辿り着いたブラウン神父が言いに来たところで、停電が起こり、電力が戻った次の瞬間には撲殺されたドロシーの姿が。
逆上して割れた瓶を手に威嚇するアーチーは少佐に返り討ちにされ、殴り倒された彼のポケットからは失われていた笛が出てきました。
犯人は階段の鏡に映ったドロシーを殺そうとしたはずが、それは合わせ鏡のようになってしまっていた別の鏡の像が映り込んだもので、勢いよく飛び込んできた教授をドロシーと間違え誤って殺してしまったのです。
親子の関係は不健全で、笛を持っていた事もあり残された2人はアーチーが母親を殺そうとしたのだと言いますが、ブラウン神父はそうではないと考えています。
ドロシーの唯一の慰めだった夫の霊を追い払う事で彼女を苦しめようとしていたのはリリスでした。
彼女の袖口には口紅の跡がついており、恐らく暗くなったタイミングで笛を吹き、咄嗟に笛についた口紅を袖で拭ったのでしょう。そして、明かりがついた後は母親の死を慰めるふりでアーチーのポケットに笛を忍ばせたのです。
警察の到着を待たずに急いで帰ろうとするリリスを少佐が引き留めますが、背を向けた拍子に花瓶で殴り倒される少佐。
それを目の前で見ていたブラウン神父には、割れた花瓶の破片を首筋に突き立てて脅し、ピッキングツールを回収した上で小部屋に閉じ込めてしまいます。
キッチンのガスを洩れさせてブラウン神父を閉じ込めた部屋の前に蝋燭をセットするとマッチで火をつけようとするリリス。殺す気まんまんです。
彼女が亡き母の件でドロシーには助けてもらったと話していた事についてブラウン神父が話を持ち出すと、彼女が殺したいと考えるほどドロシーを憎んでいた理由が分かりました。
リリスが10歳の時、3歳の妹が行方不明になって警察でも見つけられず、縋る思いで彼女の母はドロシーを頼ったのだそう。霊視をしたドロシーは「妹は死んでいる」と言い、家族全員が嘆き悲しみ、その後も母親だけは死んだ娘と話すために何年もの間毎日のようにドロシーのところへ通い詰めました。その結果、生きている人間への関心を失った妻についていけなくなった父親も家を去ります。母親にとって、生きている家族の方が幽霊のような扱いになってしまっていたのです。
しかし妹は死んでなどおらず、子供のいない夫婦に育てられたと7年後に発覚するも、ドロシーはペテンを認めず妹のふりをした悪霊に騙されたと責任転嫁。
両親を奪われたも同然のリリスは元凶となったドロシーがどうしても許せませんでした。
ただ、ドロシーはペテン師ではなく本当に自分に霊能力があると信じていて、夫の霊と話す様子を見ればそれは明らかです。
死後の世界を信じていないにも関わらずオカルトで生計を立てているリリスの方こそペテン師で殺人者だ、と火の玉ストレートを投げ付けるブラウン神父。
話しているうちに充満したガスで倒れてしまったリリスは鍵を落とし、ブラウン神父は持っていた傘の骨で扉の下から鍵を回収してようやく外に出られます。昔は両側どちらからでも鍵穴になっている扉が多かったのでしょうか?
とにかく外に出てガスを止めて換気し、倒れ込みながらも屋敷の外へ脱出できました。
そこへようやく警察が到着し、後の処理はお任せです。
忌まわしいあの笛をこっそり持ち帰ってきていたブラウン神父は、その後笛を壊して川へ捨てていましたが、旧友のワイズマン教授と最期に話せるパターンはありませんでした。
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