エピソード6 “The New Order”
あらすじ
「デイリー・エンクワイヤラー」のオーナーであるホーソーン卿が、故郷のケンブルフォードに戻ってきた。会長職に退き、編集長の座は息子に譲るという。地元の名士である彼は自分を特別扱いするようブラウン神父に求めるが、ブラウン神父は応じない。そんな中、みずからが主催したガーデンパーティーで、ホーソーン卿が何者かに銃で撃たれる。
ネタバレ感想
村中で噂になっている〈アーサー・ホーソーン卿〉が告解に来ています。
告解に来ていながら、その資金力の成せる技なのかえらく横柄な態度のホーソーン卿は金を出す代わりに誰よりも自分に尽くし精神的要求に応えろと宣っております。さてはロクなやつじゃないな?
徐ろに葉巻に火をつけたところで、教会内での喫煙を咎められると「神父、君にとっては私が神なんだ」と捨て台詞。……さては、めちゃくちゃ嫌なヤツだな?
模範的な信徒でデイリー・エンクワイヤラーのオーナーが戻ってきた事を喜びつつ、新聞で記事になっている売春宿通いの息子〈ゲイブ〉について噂するマッカーシー夫人。
あの横柄な男をマッカーシー夫人が『模範的』と評して好意的に捉えているだなんて、ブラウン神父はあの告解室でのやり取りで彼の裏の顔を見せられたという事でしょうか?
ウェストミンスターから戻ってきたホーソーン卿はあちらで懇意にしていた〈フェザーストーン神父〉も連れて帰って来ており、この男もまた横柄で嫌な感じ。
ホーソーン卿の妻〈マーゴット〉はいかにも上流階級の夫人といった雰囲気で、教区誌に寄稿したいとマッカーシー夫人に頼みつつもこの村を馬鹿にしてこれまた嫌な感じ。嫌な感じ一家です。
そんな彼らが催しているガーデンパーティーの最中、ホーソーン卿は『エンクワイヤラー』の編集長の座を息子に譲るつもりだと話しますが、本人はむしろ嫌そう。
いざ皆の前で後継者を発表しようとするもゲイブの姿は見当たらず、次の瞬間ホーソーン卿は近くの森の中から胸を撃たれて倒れます。
薬莢が残された場所には、“FL”のイニシャルが入った金のカフスボタンも落ちていました。
いっそ即死なら一つ問題が片付いたところでしたが、わりと元気そうなホーソーン卿は改めてブラウン神父に自分の手足となる事を要求し、「出来る限り力にはなるつもりでも全ての教区民には平等に仕えなければならない」という模範的な解答を聞いてケンブルフォードから異動しろと圧力をかけてきています。
その手回しはかなり素早く、司祭館で待っていたフォックス神父はレイナード司教からの指示を預かってきており、ブラウン神父はなんと停職を命じられてしまいました。
どうやら、告解の守秘義務が破られたという申し立てを受けての事だそうで、フォックス神父は調査のためにやって来たようです。
停職中の間はフェザーストーン神父が代理を務めるとかで胸糞悪い話だなぁ。
ホーソーン卿に記事を書かれた『犠牲者』を自称してグラスの中のシャンパンを顔にかけ、会場から連れ出されていた〈スタンリー・ブキャナン〉が容疑者として捜索される中、ブラウン神父は彼が滞在しているのが〈ベケット夫人〉の民宿だと気が付き、早速会いに行きます。司祭服を脱いでスーツ姿のブラウン神父はただのおっちゃん過ぎますな。
「小包みが届いた時の夫人は殺しかねない顔をしていた」と近親者の犯行を疑っているらしいスタンリー。
スタンリーは、ホーソーン卿に同性愛者だと記事で暴露され、全てを失った上に国外追放になったのだそう。
ブラウン神父と話している最中に殺人容疑で逮捕されてしまいましたが、確かに彼が犯人なら犯行前にあんな目立つ行いはしない事でしょう。
退院したホーソーン卿は再び深夜に狙撃で狙われ、レディ・ホーソーンとゲイブはそれぞれ夜中に散歩していたとかでまたしても2人揃って不在でした。
もう1人、フェザーストーン神父も事件当夜に出かけております。
レディ・ホーソーン宛の小包みの中身を調べに行ったマッカーシー夫人は大胆過ぎるやり口で盗み見して案の定本人にバレてしまいました(笑)
中身はホーソーン卿と愛人の写真だったようで、浮気者の夫を持った者同士少しのやり取りは出来ましたが、口が堅いとはどの口が言っているのか。
大司教を目指しているフェザーストーン神父がこんな田舎の村へやって来たのには、ホーソーン卿から断れない提案を受けたからではないか?とブラウン神父が訊ねると、「私は重大な不正に加担しているんです」とブラウン神父への虚偽の申し立てに関わっている事実を明かしました。
自分がケンブルフォードで軌道に乗るまでの1年間だけここで神父を務めれば根回ししてやるからすぐ司教になれると出世を約束されての事です。
さすがにホーソーン卿がありもしない事実をでっち上げてブラウン神父を停職に追い込むとは思っていなかったフェザーストーン神父は、自分が想像以上に大きな不正に巻き込まれていると気付いて手を引くと言いに行くため、2度目の襲撃が起きた夜にホーソーン卿を訪ねていました。聖職からも退くつもりだと覚悟しているほどには反省しているらしく、なんだ、思ったより良いヤツじゃないですか。
今回は、嫌味なフォックス神父のお手柄で例の“FL”、カフスボタンが誰かのイニシャルではなく、ケンブリッジ大学の演劇クラブ“フットライツ”を意味していると分かります。
ケンブリッジ大卒と言えば、ホーソーン卿の息子ゲイブ。ただ、彼は演劇クラブに所属してはおらず、大学で出会ったお相手スタンリーの犯行を隠すために2度目の威嚇射撃を行ってライフルを放置したのです。
性的指向を隠すために必死で色んな女性と付き合ってみた事が記事になっていたそう。
妻からゴシップ写真を叩きつけられたホーソーン卿は、拘留中に2度目の射撃事件が起こったことから釈放されたスタンリーを待ち伏せてネガを渡すよう要求。
そのまま車で人気のない岬までまんまと行ってしまう油断よ。
ホーソーン卿はスタンリーの事を記事にしただけではなく、息子との関係まで知っていたから警察を買収してスタンリーだけを逮捕させて息子の性的指向も改めさせようと企てていたのです。ゲスイ親父です。
今にも崖から突き落とされそうになっているところにバイクをかっ飛ばしたブラウン神父とゲイブが到着しますが、この期に及んで「同性愛者の息子はいらん!」と言い放ってスタンリーの怒りを買うホーソーン卿。頭はあまり良くないようですね。
父親の不倫写真を母親に送りつけていたゲイブは、これ以上全てを父の思い通りにさせないためにこのスキャンダルを公表すると宣言。
おかげで、醜態を晒すことは避けたいホーソーン卿はこの件での全てを不問にして握り潰す事にしたようです。
スタンリーとゲイブには未来がありそうですし、ブラウン神父も教区に返り咲き。
マーゴットに関しては夫を切り捨てる覚悟ができたらしく、沈黙と引換えにここから1人でロンドンに戻れと交渉し、憎しみから解放されていきいきしておりました。終わり良ければ全て良し。
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