エピソード2 “The Viper's Tongue”
あらすじ
ラングドン夫人は自身のゲストハウスの裏庭の芝生に「グランド―」の文字と翼のついた短剣の絵が描かれているのを見つけブラウン神父に調査を依頼する。子供の落書きだと言って軽く考えるマッカーシー夫人だが、今度は彼女の讃美歌集に同じ短剣の絵と「ファメース」の文字が。そんな中、ペンマーク氏の書斎から火が出て彼の遺体が発見される。
ネタバレ感想
マッカーシー夫人の誕生日を祝うパーティーがあり、マッカーシー夫人と同じく噂好きそうな〈ラングドン夫人〉は、米国帰りの〈ルービー・ネリンス〉の姉〈フランシス〉は一見優しく敬虔でも、彼女が亡くなってしまった事故の前に夫の〈ペンマーク氏〉に隠れて浮気していた、その相手は精肉店主〈フレデリックス〉だと話しています。
翌朝、宿を営むラングドン夫人は庭の芝生に“グランドー”の文字と翼のついた短剣のマークが描かれているのを発見。
ラングドン夫人は捜査が得意なブラウン神父にこの件を調べて犯人を捕まえて欲しいとミサの前に頼みました。
マッカーシー夫人は子供のイタズラだと笑っておりましたが、ミサが始まってみれば同じマークと“ファメース”の文字が教会の備品である聖歌集にも落書きされているのが見つかります。同一犯の仕業に違いありません。
ミサに顔を出さないのはおかしいとペンマーク氏の事を心配して訪ねてきたブラウン神父は、彼の屋敷から煙が上がり消防車と警察が到着している現場に出くわします。
ドアと窓は施錠されており、暖炉や電気系統の故障の形跡も喫煙具もない状況で机に座ったまま火だるまになってしまったペンマーク氏。
そして、現場には例のマークと“イグニス”の文字が書かれたメモが落ちていました。
これを見た神父は、『火と雹 飢餓と死 これらは全て罰するために創られた』というシラ書39章の一節の引用で、イグニスが火、グランドーが雹、ファメースが飢餓、モルスが死にあたり、マッカーシー夫人にも危険が迫っていると警告します。
翼のついた短剣は『復讐の天使』だろうとマロリー警部補。既に被害者が出ているので皆真剣に少しでも身に覚えがないかと問いますが、マッカーシー夫人のズケズケ物を言う性格からして些細ないざかいは日常茶飯事のため容疑者候補があまりに多過ぎる事態に。
マロリー警部補達の警告虚しく、頭を殴られて即死したラングドン夫人が発見され、台所のテーブルには、開発のためにケンブルフォードの不動産を買い漁る〈ベルクロフト〉の名刺が。
現場を見たブラウン神父は、ラングドン夫人の頭の周辺だけ濡れた部分がある事から、高所から巨大な雹のような大きな氷の塊が降ってきて頭に直撃したと仮説を立てます。
これで火と雹が揃い、マッカーシー夫人宛の飢餓を意味する脅迫がますます気になってきました。
この真夏に巨大な氷の塊を作れる冷凍庫はケンブルフォードに3台ある事が判明。
精肉店とルービーズ・カフェ、そしてベルクロフト氏の邸宅です。
進んで恨みを買いに行きがちなマッカーシー夫人は、精肉店にネズミがいるという噂を聞いては密告し、アメリカンなカフェを無くすよう嘆願書を作成していた事をそれぞれ謝罪しに行きました。
結果分かったことは、フレデリックスもルービーも氷を作れる状況にありながらラングドン夫人殺害時のアリバイがあるという事。
残るベルクロフト氏には2人の被害者の不動産を購入しようとするも断られていたという動機があります。ただ、マッカーシー夫人を狙う理由があるのかどうか。
そこでマッカーシー夫人は、亡くなる数週間前に「離婚は必ず罪になるのか?」とたずねて来たフランシスに対し、「神の前で誓ったからには努力しなさい」と返した事を思い出します。そして、フランシスの浮気相手がもしベルクロフト氏で、自分の助言に従って彼と別れていたとすれば復讐の矛先になってもおかしくないと考えたようです。
マッカーシー夫人宛にはブタの舌と『ファメース、次はお前だ』と書かれた脅迫状が届いて、堪忍袋の緒が切れたシドはフレデリックスのところへ怒鳴り込みに。
ブタの舌を送りつけるなんてさも精肉店の仕業のように思えますが、確かにフレデリックスの言う通り店の商品をタダで送るのかと聞かれれば一番犯人から遠い人物かもしれません。
更に、ラングドン夫人は長年の客だったそうで、経営不振のこの店の常連さんをわざわざ殺す動機もありません。
ペンマーク氏については、『非情な男』で彼の妻が“事故”を起こすのも無理はない、と何か知っている口ぶりのフレデリックス。
どうやら、フランシスの車を川から引き上げた知人の整備士から、スリップ痕もなくブレーキには問題がなかった、橋から落ちたなら自ら落ちたのだと聞いていたそうです。
もはや振り切れている巡査部長のブラウン神父達への肩入れは清々しい(笑)
優秀で有能なのに、純粋過ぎて時にオカルトめいた話を本気でしている所なんかも含めてとことん良いキャラです。
そんな巡査部長からこっそり?見せてもらった捜査資料には、ペンマーク夫人が亡くなった日に夫は出張中で妹は渡米していたから庭師が遺体の身元を確認したとの記述が。
ペンマーク夫人が亡くなった時、辞表を出した元庭師とは、シドの友人でもある消防士〈ミック〉で、恋愛関係だった夫人の死が辛くて屋敷を去っていました。
2人の関係に気付いたラングドン夫人が不倫の噂を流していると知ったフランシスはマッカーシー夫人に助言を求めに行き、助言通りに離婚をとどまるも罪悪感と孤独に耐えられずに自殺。
フランシスを不幸にした夫、ゴシップで窮地に追いやった人物、そして不倫相手と別れるよう説得した友人に復讐を企てたミック。
最初のペンマーク氏の現場では、いち早く駆け付けた消防士なら混乱に乗じて内側の鍵穴に鍵を入れる事は容易いものの、ベルクロフト氏から故障した冷凍庫を運び出すよう依頼を受けていた彼は冷凍庫を修理工場へ出しています。
これは単純に、冷凍庫を保有していてラングドン夫人死亡時刻のアリバイを証言できる共犯者がいたから。
フランシスを愛し、復讐のためにはるばるケンブルフォードへ帰ってきた妹はマッカーシー夫人を今にも殺しそうな勢いです。
アメリカでダイエット用として流行っている活性炭を紅茶に混ぜて飲ませていたルービー。
大量摂取すると血糖値が一気に下がって死に至る代物で、飢え死にのような症状が最速で現れるというのです。
駆け付けたシドとブラウン神父は教会で意識を失って倒れているマッカーシー夫人とルービーを見つけて急いで救急車を手配。
ルービー曰く、翼のついた短剣は正義の味方を装った暴力と恐怖の象徴だったそうです。なんだか物凄い思想を感じます。
さすがの神父も手が出るか?と思うような場面でしたが、そこは神父らしく、しかしこれ以上ない鬼気迫る態度でルービーを説得し、何を飲ませたのか明らかにさせていた甲斐あって搬送先で適切な処置がなされたマッカーシー夫人は無事に回復しています。
噂話に懲りた様子ですが、この瞬間だけでしょう(笑)口は災いの元とはよく言ったもので、今回ラングドン夫人が殺されてしまったのは行き過ぎたゴシップのせいですし、マッカーシー夫人も内情をよく知らなまま迂闊にしてしまったアドバイスのせいであわやというところでした。
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