パイロット『冤罪の裏側』“The Chinese Job”
あらすじ
エリート警視サンドラは、捜査中にミスをして第一線を追いやられる。名誉挽回のチャンスとして副警視監べヴァンから指示されたのが、新設部署の指揮。それは過去の未解決事件を専門に再捜査するチームだった。
ネタバレ感想
既に完結済みのBBC人気シリーズ。
ここ最近見て初期ガラケーの登場に古めかしさを感じた『ミストレス』は2008年開始ですが、こちらは2004年放送のもので更に4年も前。20年近く前のドラマシリーズということで、ある程度の覚悟を持ちつつ、しかしそこから10以上のシーズンが続いた人気作なのだという期待も失わずに視聴開始です。
ロンドン警視庁勤務の〈サンドラ・プルマン警視〉は、とある捜査中の些細なミスが発端となり人質に大怪我を負わせ、これまで積んできたキャリアが崩壊寸前。
〈アナ・ダブロフスキー〉殺人事件の容疑者〈ロディ・リンガー〉が誤審により釈放になったと話す〈ドナルド・べヴァン副警視監〉。
状況証拠からクロ確定だったはずのリンガーでしたが、事件担当の捜査員達が昨年別件の不正工作、つまり陪審員の買収で有罪判決を受けた結果、20年も前のこちらの判決も見直されて証拠不十分で無罪放免となったそう。
警察は威信をかけてアナの事件を再捜査し、リンガーに不利な証拠を挙げて名誉挽回したいという思惑が。
先の捜査で大失態をやらかしたサンドラには再起をかけたの新チーム“UCOS ユーコス”が任せられることになり、アナの事件の再捜査も担当に。
未解決や保留中の事件を洗い直す専門的な捜査班と言えば聞こえはいいですが、その実態は引退した元刑事から成る窓際職。癖のある御隠居をまとめねばならないという実質の左遷です。
まずは元上司でもある〈ジャック・ハルフォード〉を誘いに行き、一緒にメンバー集めから始めるのですが、メンバー候補は大多数が既に死んでしまっています。募集をかけてみても集まるのはロクでもない爺さんばかり。
その中から、いかにも神経質そうな〈ブライアン・レイン〉と傲慢な態度の〈ジェリー・スタンディング〉を推したジャック。
人間的に癖があっても捜査の腕は元警視正のお墨付きだということです。この人選に反対したサンドラとの間でチームワークに難が出そうではありますが。
妻の〈ゲイナー〉とテレビ出演したリンガーは、釈放早々ロンドン警視庁を糾弾する内容で正義を語っております。
UCOSが最初に洗う事件はもちろんアナ・D事件です。
自宅マンションで撲殺されているのが見つかったアナはペリカンクラブのウェイトレスで、遺体の第一発見者は同僚の〈イブ・コラード〉。
部屋に押し入られた形跡はなし、48時間後に殺人捜査班は札付きの悪党でクラブの常連だったロディ・リンガーを容疑者として逮捕。
事件の夜は家にいたと主張し、妻がそのアリバイを証言しましたが、リンガーの靴についた血痕が被害者のものと一致、更にマンションの鍵もリンガーの上着のポケットから発見されています。
サンドラの説明もそこそこに、UCOSメンバーはそれぞれ勝手な行動を取り始めていて幸先が不安になる光景。
しかし、「彼が犯人だと証明するのが目的?他の容疑者を見つける気はないと?」と捜査の在り方を疑問視するブライアンのひと言は核心に迫るものがありました。
アナの母親に再捜査を告げにいったサンドラとジャックのコンビ。ジャックはUCOSの良心的な役割で、副指揮官のはずが既にサンドラ以上のリーダーシップを発揮しております。
遊び人なちょいワル親父風のジェリーの自宅には居候中の娘〈アメリア〉が。
ハメられて退職に追い込まれたというブライアンは意外にも既婚者で、妻〈エスター〉とは比較的良好な関係です。
サンドラは捜査中の失敗が原因で、恋人だった既婚者の〈ダグ〉から別れを切り出され、公私共にボロボロ。
ジャックは妻〈メアリー〉に先立たれていて、庭にある墓石に向かって語り掛ける様子を見るに、かなりの愛妻家だったのでしょう。
ジェリーは直接リンガー宅を訪問して、どういうわけだか歓迎されております。
悪党に間違いはないとしても、アナに関しては本当に冤罪だったようですね。
ジェリーには独自の型破りな捜査のやり方があるらしく、悪党連中との会話に花を咲かせてあっという間に当時ジェリーは現金輸送車を襲っていたからアナの殺害に関しては本当にやっていないという証言も集めてきます。
当時のアナ・D事件を担当した〈イアン・ラヴェット元警視正〉は、ジャックに言われるがままUCOSに呼び出し。
堅物な雰囲気溢れる元エリート刑事は取扱いに難がありますが、再捜査にあたって当時の指揮官の話は不可欠です。
イブの住所を突き止めたブライアンはジェリーと共に彼女の自宅へ。アナは同性愛者で、リンガーとの不倫関係は有り得ないとか。
ジェリーはゲイナーと同級生だったと知って、信用出来ないと自宅まで文句を言いに行くサンドラ。娘1人どころか、元妻3人とそれぞれに娘が居て、6人の女性達がジェリーの自宅で一堂に介してディナーをしているのは不思議な光景です。
怒り心頭で乗り込んできたサンドラに、ロディの昔の仲間を油断させて得た重要な聞き込みテープを聞かせるジェリー。盗聴のようなものなので法的には使えない証拠だとしても、UCOSの捜査の前提が覆る証言です。
昔ながら過ぎるアウトなやり方での捜査で、更にサンドラを怒らせることにはなってしまいましたが。
サンドラの怒りなどどこ吹く風で、ゲイナーを呼び出し、彼女の風俗店の元手は夫が現金輸送車から奪った金だろうと指摘するなどやりたい放題。
ジェリーの違法テープがUCOSで共有され、考えを巡らせていたご老人達はテムズ・バレー署所轄の同じく未解決事件のことを閃きます。こちらの担当官もラヴェット。
UCOS唯一の若手で、情報管理・資料作成・IT担当官を担う〈クラーク巡査〉のひと言からも、ラヴェットが2つの事件で不正を働いた説が濃厚になってきました。
ブライアンは資料保管庫を調べているうちに、自分が固執している事件〈アントニー・ケイ〉のファイルを見つけており、さすがに部外秘の資料を持ち去るようなことはしなかったものの、UCOSの捜査とは別に独自の調べを進めそうな気配。
本来の目的であるアナ事件の非重要証拠ファイルの中から見つけてきたのは、いたずら扱いで裁判にも未提出に終わった手紙です。そこにはロディは現金輸送車を襲っていたからアナを殺していないという文章が。
この手紙はリンガー逮捕の翌日に届いたもので、当時のずさんな捜査態勢がよく分かるもの。
ラヴェットの書いた調書はでっち上げにしか見えないと考えているジャックに賛同する後の2人。ようやくサンドラも、リンガーが殺人犯ではない可能性を受け入れ始めております。
改めて調べさせていた科捜研からの結果も届き、靴についた血痕はアナと一致しているものの、アナともリンガーとも一致しない別の微細な血痕も付着しており、アナの爪に残った血痕もリンガーとは別人。証拠保管室にあった手紙に貼られた切手に残ったDNAは爪に残されたものと一致。靴に残っていたDNAはリンガーではない男性のものなのに対し、爪に残っていたのは女性のもので同一人物ではありません。
再びラヴェットを呼び出して、風俗取締班に話も聞かなかったこと証拠になる手紙を隠したことを糾弾するサンドラとジャック。
どうやら、ロディ・リンガーの靴を科捜研に回す前にアナの血痕を故意に付着させていたのはラヴェットだったのです。ジャックからオフレコで糾弾されると意外にも自分がした細工をすんなりと認めてくれました。
正義を追求するあまり、リンガーがアナ殺しだと信じていたラヴェットは悪党を野放しにするまいという目的のために不正を働いたそう。
ただし、細工した血痕のせいで当時の技術ではその下にあった微細な他の血痕が見逃される結果に。
今回改めて科捜研で調べてもらうと、それは未解決事件の被害者〈ウィリー〉のものと一致。
いきなりゴルフクラブで殴りつけ、「あんたはロディをハメる必要はなかった!刑事の仕事を怠ったせいで真犯人は野放しのままだ!」と掴みかかるジャック(笑)それはあかんやろ。やり過ぎやろ。
元刑事の不正を暴いてもしょうがないだかなんだかで、起訴を免れた代わりの鉄拳制裁ということで。下手したら死にそうですが。
行方不明だと報道されていたイブが、自殺未遂で病院に運ばれたとの連絡が。
当時恋人だったアナを痴情のもつれの末に殺してしまい、だから手首を切ったのでは?と言われて、自分の恋人はアナではなくロディだと叫んだイブ。アナのマンションで密会していたから2人とも合鍵を持っていたそう。
イブはロディがアナを殺したと思っており、この間会いにきたロディから殺意を感じたと訴えます。
高官だったラヴェットからのクレームが入り、サンドラはべヴァン副警視監から圧力をかけられるハメに。「誤った結果が正しい時もあるんだ、奴が有罪だろうと無罪だろうとな」とまで言ってしまっております。腐敗体質は20年経っても変わっていない、と。
しかし、隠れていたジャックは彼の言葉をマルッと録音しており、まんまと副警視監の名の下に逮捕状を請求させる流れへ。
そのままジャックとべヴァンはゲイナーの所へ向かい、先客でその場に居たジェリーは確執がある副警視監がUCOSに関与していることを知ってジャックに詰め寄りますが、必要以上の干渉をさせないカードは既に手に入れているわけです。
サンドラも一緒に来ていて、大勢の弁護士を招いた食事会の席で、リンガーはアナ殺害と無関係だったことを大々的に発表。盛り上がるゲイナー夫妻と客人達でしたが、そこへ警官が大勢入ってきて周囲を取り囲むと、副警視監からウィリー殺害の容疑で改めて逮捕すると宣告が。
そしてサンドラも、ゲイナーに対してアナ殺害容疑で逮捕すると続けます。
自分が本当のアナ殺害犯だったからこそ、無実の夫を助けるためにあの手紙を出したのはゲイナーでした。
夫の不倫相手がイブではなくアナだと勘違いして全く無関係だったアナを殺していたのです。
まさかの真実に夫婦は大荒れ。その場は大乱闘に発展するも、真犯人は捕まり悪党も野放しになることがないという上々の結果を残せたUCOSでした。
パイロット版だからか1時間半弱とえらく長かった。初回の感想はまぁまぁと言ったところですが、この先老いぼれ軍団の凸凹チームワークが魅力になっていくんだろうなぁ、という感じです。
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